- 『次の朝は他人』・・・
本当に美しく、恐ろしい映画だ。———菊地成孔さん(音楽家・文筆家)♂
- 『よく知りもしないくせに』・・・
エモーショナルな人が多い韓国では、主人公のようなキャラや、この映画の牧歌的な空気感は癒しとなっているのでしょう。出演する女優や俳優もリラックス&デトックスできそうです。韓国の映画界でホン・サンス監督が支持される理由がわかりました。
———辛酸なめ子さん(漫画家・コラムニスト)♀
- 『教授とわたし、そして映画』・・・
この映画の全体が、恋の魔力というか、幻影と呼んでもいいなにかを、写し取っているのだと、わたしは思う。決して知ることのできない、だからこそ求め続けてしまう「自分ではない誰かの心」が、そこにある。
———柴崎友香さん(作家)♀
- 彼らはいつも女のことを話題にする。『ハハハ』の二人の男は、まだ女を知らない高校生のような無邪気さだ。けれど、映画として語られるとき見事な言葉になって恋愛が像を結ぶ。そして、『次の朝は他人』の主人公の、どこかだめな人物像は、またべつの言葉として語られ、いくつもの恋愛の姿を繊細に描くとき、それはきっと、男と女の愚かな姿になる。それをどんなふうに語ることができるか。恋愛を口にするのはこんなにも滑稽だ。ホン・サンスはそれをよく知っている。
———宮沢章夫さん(劇作家・演出家・作家)♂
- ホン・サンスの映画を語ることは恋愛を語ることであり、恋愛を語ることは男と女を語ることであり、男と女を語ることは絶望を語ることであり、絶望を語ることは世界を語ることであり、世界を語ることは映画を語ることであるかように、映画と恋愛はどこまでも相性がいいのだ。
———向井康介さん(脚本家)♂
- ホン・サンスの映画は、てごわい。
一見、凝ったことなど何もしてないようでいて、実は複雑な話法をさりげなく駆使していたり。
ごくありふれた、あまりにもありふれた人間関係の物語であるようでいて、いつのまにか人生の不可思議な深遠さを垣間見させてくれたり。
それはいつも、まるでカフェで偶然隣り合わせた席から聞こえてくる見ず知らずの他人の会話のような、われわれの日常とほとんど変わらない自然さで始まる。
だが、これは映画なのだ。
ホン・サンスは、映画が人生に対して何ができるのか、という命題を、絶えず考え続けている。
だからこそ、彼の映画は、てごわい。
だがこのてごわさは、なんとも魅惑的なのだ。———佐々木 敦さん(批評家)♂
- 男たちはへっぴり腰で酒にのまれ、とてもうれしそうにキスやセックスをし、バカげた声で永遠の愛をささやく。
女たちは男の甘い言葉の賞味期限を知っていて、その刹那を楽しむ。
そんな男と女を繰り返し描いてホン・サンスは、わかるということの傲慢さ、運命の頼りなさを鼻歌でささやく。
なにより迷惑なのは、観終わると、午前中にひとり、ラブホテルから吐き出されたような気分になることだ。そうと知っていて、また観てしまう。———町山広美さん(放送作家・コラムニスト)♀
- ウィットに富んだ台詞と語りのバランス、
パズルのようにバラバラのように見えて、
ゆったりと、思いがけない驚きに満ちたリズムで
映画は進んでゆく。———バラエティ誌
- 『よく知りもしないくせに』で、ホン・サンスは、
多くを語らず、あちこちと話を飛ばしながら、
しかし時に陽気に———といった特徴を
これまでになくなめらかに、
そよ風のように軽やかに組み合わせている。
近年のホン・サンス監督の最もおかしな映画である。———スクリーン・デイリー誌
- ごくわずかの映画しか到達できない
愛の真理に到達している。———ル・モンド紙
- ホン・サンスが
大いなる美しさを備えた映画を携えて帰ってきた。———リベラシオン紙
- さざ波のように広がってゆく心の動揺、
不意に噴き出す感傷。
次に何が起こるのか予測不可能なのだが、
はかない感情の竜巻が通り過ぎた後、
観る者の心には、満たされた瞬間が訪れる。———カイエ・デュ・シネマ誌
- ホン・サンス監督のトレードマークといえる
距離を置いた視点は、
ぶっきらぼうに見えて抜け目が無く、
ロマンティックであると同時に
ひんやり冷たさを感じさせる———ヴィレッジ・ヴォイス誌
- 『教授と私、そして映画』の魅惑は、
単にこれまで以上に自由で実験的な
作風にあるのではなく、
人間関係を見つめる静謐なまなざしにある———カイエ・デュ・シネマ誌
- 俳優たちのアンサンブルは完璧で、
余計なものを切り捨てた撮影は、
ソウルの街を、繊細きわまりない喜劇の舞台に変える。———スクリーン・デイリー誌
- 安らぎを求める主人公たちを舞い散る雪の中に置く。
そして、その雰囲気が観る者を魅了する。
ホン・サンスはロメールのように素晴らしい———ヴィレッジ・ヴォイス誌
- ホン・サンスの映画は
しばしばエリック・ロメールの映画に比べられる。
『満月の夜』の作者と同様、ホン・サンスは、
俳優の演技を最大限に引き出し、
心の中の現実を生き、
言葉の端々に真の感情や欲望をにじませ、
現実について語りながら、運命を浮き上がらせる。———ル・モンド誌