真夏の気だるい空気のなか、映画祭に審査員として赴いた映画監督ギョンナム。浮かれた雰囲気に流され、映画祭のコーディネーターの女性が気になりながら痛飲する日々。
そこに旧友サンヨンが現れた。サンヨンの家でその妻ユ・シンと飲み明かし、二日酔いのままホテルで目覚めたギョンナムに届いた「二度と自分の前に現れないでくれ」というサンヨンからのメッセージ。理由もわからず戸惑うギョンナム。さらに映画祭のコーディネーターのヒョニからは、酔いつぶれた自分を部屋に置き去りにしたことを責められた。
訳も分からず映画祭から逃げ出した数日後、済州島に向かったギョンナム。またもや遭遇する自らの過去。先輩の画家チョンスとその妻スン――スンはかつての恋人だった。もちろん先輩には秘密だ。花火のように燃え上がる過去の恋。別れ際にスンから渡された、携帯電話の番号のメモ。先輩の留守の間に情事にふけるふたり。それを目撃する近所の男。男はすぐにチョンスに連絡した。逃げ出すギョンナム。砂浜に辿り着いた彼を追いかけるようにスンがやってきた。スンはギョンナムに自分たちの恋愛について諭すように語り出した。
偶然、よみがえる過去の記憶と恋愛。複数のエピソードを通じて出会う女性たち。恋することは罪なのか? ホン・サンス作品には欠かせない存在となったキム・テウが、優柔不断な男を軽やかに演じる悲喜劇。コ・ヒョンジョンは『浜辺の女』に続いてのホン・サンス映画への出演となる。
2009年/韓国/カラー/126分
監督・脚本:ホン・サンス
撮影:キム・フンクァン
編集:ハム・ソンウォン
キム・テウ(『JSA』『キッチン~3人のレシピ~』)、
コ・ヒョンジョン(『浜辺の女』)、
オム・ジウォン(『グッド・バッド・ウィアード』)
ウィットに富んだ台詞と語りのバランス、
パズルのようにバラバラのように見えて、
ゆったりと、思いがけない驚きに満ちたリズムで
映画は進んでゆく。
———バラエティ誌
『よく知りもしないくせに』で、ホン・サンスは、
多くを語らず、あちこちと話を飛ばしながら、
しかし時に陽気に———といった特徴を
これまでになくなめらかに、
そよ風のように軽やかに組み合わせている。
近年のホン・サンス監督の最もおかしな映画である。
———スクリーン・デイリー誌