ハハハ

STORY 考察(2)一目惚れには気をつけて

「ここで別れましょう。このまま一緒にいたい気分だけど」

カナダに移民することを決意した映画監督のムンギョンは、先輩の映画評論家チュンシクと一杯飲むことに。まずは乾杯。そして酒の肴に、ひと夏の出会いについて語り始める――ふたりは偶然、南の港町トンヨンに行ってきたばかりだった。ムンギョンはふぐ鍋食堂を営む母親に、カナダに行く決意を伝えにトンヨンに来たのだった。ムンギョンは暇にまかせて辿り着いた史跡の観光ガイド、ソンオクに一目惚れ。「あの女の足がいい」 しかし彼女には海兵隊出身の恋人チョンホがいた。そんなことはお構いなしに、ソンオクにちょっかいを出し始めるムンギョン。家まで押しかけたり、ホテルに呼び出したり。そうこうするうちに、なぜかチョンホが、自分がトンヨンに被ってきたのと同じ帽子を被っているのに気がついた。「あの帽子は母親にあげたはすだが…」 そのチョンホはチョンホで、食堂の美人店員に気もそぞろ。やがてムンギョンは、チョンホンがソンオクに隠れて別の女性とホテルに入るところを発見し、すぐにソンオクに知らせ、破局に追い込む。ソンオクから鬱陶しがられていたムンギョンはまんまとソンオクに近づくことに成功する。


一方、先輩のチュンシクは妻子がありながらも別の愛人ヨンジュと付き合っていて、二人のアヴァンチュールのためトンヨンにやってきた。トンヨンにやってきたのは大学の後輩チョンホの故郷で、彼に会うためでもあった。彼の紹介でトンヨンで一番というふぐ鍋料理屋に入り、そこでジョンファを紹介される。どうやらチョンホとジョンファは深い仲のようだ。ところが、やがてチョンホは別の女性とも付き合っていることが発覚。どうやら彼は二人の女性の間で揺れ動いているよう… 。その様子を見守っていたチュンシク自身もヨンジュと今後どうしていくか決断を迫られる。女たちの言動に振り回されていく男たち。出会う? 出会わない? それぞれの人生がすれ違いながらも、絡みはじめる。


港町を舞台に、恋に落ちた女性たちとのひと夏のヴァカンスを綴る、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリ受賞作。ホン・サンス作品ではお馴染みキム・サンギョンと名女優ムン・ソリ演じる肉感的な女性の掛けあいが新鮮な、近年の代表作。

第63回カンヌ国際映画祭 ある視点グランプリ「ハハハ」

2010年/韓国/カラー/116分

監督・脚本:ホン・サンス
撮影:キム・ヒョング
編集:ハム・ソンウォン

キム・サンギョン(『殺人の追憶』『気まぐれな唇』)
ムン・ソリ(『オアシス』)
ユ・ジュンサン(『黒く濁る村』)
キム・ガンウ(『外事警察』)
イェ・ジウォン(『気まぐれな唇』)

ごくわずかの映画しか到達できない
愛の真理に到達している。

———ル・モンド紙

ホン・サンスが
大いなる美しさを備えた映画を携えて帰ってきた。

———リベラシオン紙

さざ波のように広がってゆく心の動揺、
不意に噴き出す感傷。
次に何が起こるのか予測不可能なのだが、
はかない感情の竜巻が通り過ぎた後、
観る者の心には、満たされた瞬間が訪れる。

———カイエ・デュ・シネマ誌