◆イントロダクション◆
アン・リー監督絶賛!「この映画に嫉妬せずにはいられない!」
本国ドイツをはじめヨーロッパ中で大ヒット!
世界三大映画祭を制覇した若き巨匠ファティ・アキン
『愛より強く』でベルリン国際映画祭グランプリ、『そして、私たちは愛に帰る』でカンヌ国際映画祭脚本賞、そして本作で2009年ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞・ヤングシネマ賞をW受賞し、世界三大映画祭を36歳にして制覇した監督ファティ・アキン。映画祭の審査委員長を務めていたアン・リーは「とても素晴らしいこの映画に嫉妬せずにはいられない!」と最大の賛辞を送った。ゴダール、トリュフォーらも成し遂げていない三大映画祭のコンペティション部門すべてで受賞するという偉業を成し遂げたのはファティ・アキンが最年少と言われている。
本作はこれまでファティ・アキンが描き続けてきた自身のルーツであるトルコやドイツ在住の移民について前面では触れていない。しかし、主人公ジノスはギリシャ系であったり、トルコ系やアラブ系のキャラクターが登場するなど、ヨーロッパ中に多民族が共存していることを『ソウル・キッチン』では提示している。ドイツのハンブルクには多民族が暮らしている。その象徴であるレストラン――ごちゃ混ぜな音楽が響き、自分にとってのソウルフードを味わう人々が集う店“ソウル・キッチン”の存続とは、彼らの心の拠り所の存続なのだ。ファティ・アキンはこれまでの作品のようにテーマをシリアスに扱うのではなく、その主題を残したままにエンターテインメント作に昇華させた。ドイツ語で“郷土映画”をさすハイマートフィルム。ネオ・ハイマートフィルムとも呼べるのが本作『ソウル・キッチン』である。
2009年末に公開されたドイツでは、公開2カ月で130万人を動員し大ヒットを記録。また、イタリア、フランス、ギリシャ、オーストリア、トルコといった国々でもヒットを飛ばし、ヨーロッパ中を席巻している。また、アメリカの公開でも公開第1週で劇場1館あたりの興行収入で1位に躍り出るなど、注目度も高い。
ハンブルクのレストラン“ソウル・キッチン”
みんなで囲む食卓とゴキゲンな音楽。何があってもココは故郷<ホーム>。
本作は主人公ジノスに扮するアダム・ボウスドウコス自身がハンブルクで経営していたレストランをモデルにしている。監督もアダムもその店に集い、過ごしていた日々を映画に収めたい、そう思ったことから映画が始動した。アダム自身も脚本に加わり、アキン監督とともに彼らの時間を再現させたのだ。
ジノスの兄イリアスを演じるのはドイツ映画に不可欠な俳優、モーリッツ・ブライプトロイ。『ラン・ローラ・ラン』でも注目されたモーリッツとアキン監督は3度目の顔合わせ。どうしようもないけれど愛おしくなってしまうイリアスを好演している。天才シェフ、シェインを演じるのはアキン監督作品常連のビロル・ユーネル。『愛より強く』で鮮烈な印象を残したビロルが主人公ジノスに「本物の故郷の料理」を伝える伝道師のようなシェフを演じ、ミシュランで星を獲得したハンブルクの高級料理店“Le Canard”で指導された料理の腕前を披露する。また、『やわらかい手』で強い印象を残したドルカ・グリルシュやモーリッツの母で『4分間のピアニスト』のモニカ・ブライプトロイ、そしてウド・キアまで出演しているのも映画好きにはたまらないサプライズであろう。
知っているようで知らない街、ハンブルク
映画を彩る様々な音楽と、垂涎料理の数々!
ベルリンに次ぐ大都市ハンブルク。ハンブルクという地名は知っていても、その特徴や位置を詳しく知っている人は少ないだろう。ファティ・アキンは本作を撮るにあたって「変わりゆくハンブルクの街をカメラに収めたかった」と語る。世界最大と言われる赤レンガの倉庫街や、運河沿いの高級レストラン、朝までやっているクラブやバーなど映画の中でも多くの観光地が登場し、目を楽しませる。
また、ルイ・アームストロングやクインシー・ジョーンズ、カーティス・メイフィールドといった大御所から近年のドイツ・ダブなど様々な音楽が流れるのも本作の聞きどころ。アキン監督と脚本・主演のアダム・ボウスドウコスが選んだゴキゲンな音楽が映画を彩る。
そして、大衆食堂らしいフライドポテトから高級フレンチまでやはり多種多様な料理が登場し胃袋を刺激する。目で観て、音楽を聴いて、食事を想像して喉を鳴らす――『ソウル・キッチン』は五感を満たす映画なのだ。