◆プロフィール◆
ファティ・アキン Fatih AKIN 【監督・脚本】
1973年8月25日、工場労働者の父と教師の母のもとハンブルクに生まれる。俳優を志し、93年から舞台やテレビドラマに出演していたが、在ドイツのトルコ移民役などステレオタイプの役柄ばかりであることに嫌気がさし、ハンブルク造形芸術大学へ進学。95年、監督デビュー作となる短編「SENSIN...YOU‘RE THE ONE!」を発表し、ハンブルク国際短編映画祭で観客賞を受賞。初の長編映画「SHORT SHARP SHOCK」(98)はマスコミ・観客ともに熱狂的に受け入れられ、ロカルノ映画祭の銅豹賞、アドルフ・グリメ賞、バヴァリア映画賞など9つの賞を獲得した。ユーモアあふれるロードムービー『太陽に恋して』(00)、ドキュメンタリー「WIR HABEN VERGESSSEN ZURUCKZUKEHREN」(00)、「SOLINO」(02)を発表したのち、偽装結婚から生まれる愛を情熱的に描いた『愛より強く』で、04年ベルリン国際映画祭金熊賞(グランプリ)をはじめ、04年ヨーロッパ映画賞最優秀作品賞など数々の賞に輝き、一躍その名を世界に轟かせた。
監督6作目の『クロッシング・ザ・ブリッジ〜サウンド・オブ・イスタンブール〜』(05)では、トルコ版『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』とも言うべき音楽ドキュメンタリーに挑み、高い評価を得た。『そして、私たちは愛に帰る』では07年カンヌ国際映画祭最優秀脚本賞と全キリスト協会賞を受賞。そして、最新作『ソウル・キッチン』で、09年ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞・ヤングシネマ賞をW受賞し、36歳にして、ベルリン、カンヌ、ヴェネチアの世界三大映画祭で受賞を果たす。
まだ30代にして、2作がアカデミー賞外国語映画賞のドイツ代表作に選ばれるなど、その才能は世界中に注目され、2010年には参加したオムニバス映画『ニューヨーク,アイラブユー』が日本でも公開されている。
Fatih Akin's Photo Credit:Achim Kroepsh/corazon international
ライナー・クラウスマン Rainer KLAUSMANN 【撮影】
1949年、スイス生まれ。「AUSGERECHNET ZOE」(97/マルクス・インボーデン)でアドルフ・グリメ賞、『es[エス]』(01/オリヴァー・ヒルシュビーゲル)でバヴァリア映画賞撮影賞、『愛より強く』でドイツ映画賞撮影賞を受賞している。撮影を手がけた主な作品に、『フィッツカラルド』(82/ヴェルナー・ヘルツォーク)、『彼方へ』(91/ヴェルナー・ヘルツォーク)、『ヒトラー〜最期の12日間〜』(04/オリヴァー・ヒルシュビーゲル)、『インベージョン』(07/オリヴァー・ヒルシュビーゲル)、『バーダー・マインホフ 理想の果てに』(08/ウーリー・エデル)「LEMON TREE」(08/エラン・リクリス)などがある。ファティ・アキン監督作品は、「SOLINO」『愛より強く』『そして、私たちは愛に帰る』に続いて4作目。
アンドリュー・バード Andrew BIRD 【編集】
1956年、ロンドン生まれ。ファティ・アキン監督の短編デビュー作「SENSIN...YOU‘RE THE ONE!」に始まり、ほとんどのファティ・アキン作品の編集を担当している。アキン作品のほかには『ギガンティック』(99/セバスチャン・シッパー)、ジュリー・デルピーの監督最新作「The Countess」(09)などの編集も手がけている。
アダム・ボウスドウコス Adam BOUSDOUKOS 【脚本/ジノス・カザンザキス役】
本作で共同脚本も担当しているアダム・ボウスドウコスは『ソウル・キッチン』のイメージ源だ。アダムは、俳優として活躍するかたわら、ハンブルク=オッテンゼンで10年前に開業したギリシャ料理店のオーナーとしても一級の手腕を発揮していた。「あの場所は、オレたちの家だった」と言うアダムの言葉こそ、映画の中のレストラン“ソウル・キッチン”にもっとも重要なイスピレーションを与えている。
アダム・ボウスドウコスは、1974年、ハンブルク=アルトナで、ギリシャ人の両親のもとに生まれた。ファティ・アキンとは子ども時代からの付き合いで、「SENSIN...YOU’RE THE ONE!」(95)以来、ファティ・アキン映画のもっとも重要な役者のひとりである。「SHORT SHARP SHOCK」(98)のコスタ役で98年ロカルノ国際映画祭最優秀男優賞を受賞、01年にはドイツのアカデミー賞であるアドルフ・グリメ賞を受賞した。
情熱的なミュージシャンでもあり、最近リリースされたCD「Ottensen sampler」の共同プロデューサーもこなし、彼のギリシャ民族音楽やギリシャ・ソウルミュージックへの深い造詣が、本作のサウンドトラックに大きく貢献している。
モーリッツ・ブライプトロイ Moritz BLEIBTREU 【イリアス・カザンザキス役】
『太陽に恋して』(00)、「SOLINO」(02)につづくファティ・アキン監督と3作目のタッグ。
1971年ミュンヘン生まれ、ハンブルク育ち。パリやローマ、ニューヨークで演技の勉強をし、初舞台をハンブルクにて経験後、いくつかの映画やテレビドラマに出演し、「TALK OF THE TOWN」(95)で頭角を現した。また『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』(97/トーマス・ヤーン)ではエルンスト・ルビッチ賞、ドイツ映画賞最優秀助演男優賞を受賞、海外からも熱烈に称賛を浴びる。
さらに『ラン・ローラ・ラン』(98/トム・ティクヴァ)、ドイツ映画賞最優秀男優賞を受賞した『es[エス]』(01/オリヴァー・ヒルシュビーゲル)で演技派俳優としての人気を確立する。ミシェル・ウエルベック原作の『素粒子』(06/オスカー・レーラー)では06年ベルリン国際映画祭の銀熊賞最優秀男優賞を受賞。近作にファティ・アキンが脚本を手掛けたOzgur Yildirim監督のデビュー作「CHIKO」(08)、アカデミー賞にノミネートされた『バーダー・マインホフ 理想の果てに』(08/ウーリー・エデル)がある。
本作でナディーンの祖母を演じたモニカ・ブライプトロイはモーリッツの母であり、本作の撮影後に死去している。編集は亡くなった後だったため、埋葬シーンを入れるかどうか監督は悩んだが「母は“入れるべきだ”と言うだろう」というモーリッツの言葉に後押しされてそのシーンは残すことになったという。
ビロル・ユーネル Birol UNEL 【シェイン・ヴァイス役】
1961年トルコ南部生まれ、1968年以来ドイツ在住。ハノーファーにある音楽演劇大学で学び、アルベール・カミュの「カリギュラ」やフランク・カストルフの“The Nibelungen-Born Bad”など多くの舞台で優れた才能を披露し人気を博す。多くの映画やテレビで活躍し、ジャン=ジャック・アノー、トニー・ガトリフ、ピア・マレー、ヒネル・サレームら監督の作品に出演している。ファティ・アキン監督作『愛より強く』の出演で国際的に知られるようになり、主人公・ジャイト役で多数の映画賞を受賞、ヨーロッパ映画賞の最優秀男優賞にノミネートされた。
本作では妥協のないシェフ、シェインを演じるため、ハンブルクにあるミシュランで一つ星を獲得している一流レストラン「Le Canard」のオーナーシェフ、Ali Gungormu?から指導を受けるなど徹底的な準備を行った。映画の中でアルチュール・ランボーの詩から「売ることが出来ないものを君は売っているんだ」という一行を引用している。