◆コメント◆
光と影だけの世界に繰り広げられる夢とも言えない因果なるレアリスモ。
金縛りにあったら身を任せよう。これでも始まりと終わりがあるのだ。
細野晴臣(音楽家)
短いセンテンスを重ねるシムノンの世界を、
タル・ベーラは闇と霧の、切れ目のない織物に仕立て上げた。
驚嘆すべき「持続」の抒情がここにはある。
堀江敏幸(作家)
どんな高度なテクノロジーを使ったものより別世界を信じさせる力が
タル・ベーラにはある。
劇場でみるとそれがはっきりするはずだ。
若木信吾 (写真家)
夜霧の波止場。うごめく人影。咆哮する霧笛―
シムノン独自の世界を白黒で撮ったことに、映画の成功がある。
長島良三(原作翻訳者)
離乳食みたいな映画ばかり観て喜んでいる現代人に対する挑戦状だ。
想田和弘(映画監督『選挙』『精神』)
カッサンドルの「ノルマンジー号」を思わせるアール・デコ調のファーストショットに驚嘆した。
※アドルフ・ムーロン・カッサンドル(1901〜1968)アール・デコを代表するポスター画家。数多くのポスター以外にも、イヴ・サンローランのロゴ、ファッション雑誌『ハーパース・バザー』の表紙なども手掛けた。
藤原智美(作家)
タル・ベーラの映画は、ありきたりのしきたりや形式の影に隠れている、映画が語り得る美しく奇妙な可能性を思い出させる。
ジム・ジャームッシュ(映画監督)
私はタル・ベーラの作品に影響を受けてきた。
タル・ベーラの作品は、まるでまったく新しい映画の誕生に立ち会っているかのように感じさせてくれる。そして本当の意味で「人生」を刻んでいる。彼は数少ない「視覚的」映像作家だ!
ガス・ヴァン・サント(映画監督)
タル・ベーラの映像世界は、挑発的で、誰にも真似できない。逃げ場を与えず、映画に没頭させる。
J・ジャンセン (ニューヨーク近代美術館 アシスタント・キュレーター)
私たちは生き続けるために、タル・ベーラの映画を必要とする。
私たち各々が、タル・ベーラの映画がこれからも存在し続けるために、
自分自身のフィールドで何かしら試みなければならない。
ウルリッヒ・グレゴール(映画史家、1971年〜2001年ベルリン国際映画祭フォーラム部門ディレクター)
台詞から俳優の表情、物語の進行…までひとつひとつに抑制された“美”がある。その結果、全編をある種の静けさが支配し、観ていると時の経つのを忘れてしまう。これは見事なまでのアート・フィルムであり、と同時にフィルム・ノワールのテイストも待ち合わせている。これほどの映画に出会えることは数えるほどしかない。