◆イントロダクション◆
新しい世界へと踏み出していく少女と大人たちの姿が輝く珠玉の感動作
すべての大人たちの心に響く “優しい宝物”のような物語
ユキはフランス人の父と日本人の母とパリで暮らす9歳の女の子。ある日母から父と別れてユキと日本で暮らそうと考えていることを告げられ、ショックを受ける。ユキの親友であるニナの両親も離婚していて、ニナはまだ納得していない。2人は離れたくないし、ユキの両親に別れてほしくない。そこでユキの両親を仲直りさせる為に作戦を立てるがうまくいかない。2人は最後の手段として家出をするが、森へと迷い込んでしまう―。ユキは森の中でひとりになり初めて、どうすることもできない状況とやり場のないの気持ちを受け入れ覚悟を決めて自分の意思で進んでいく。
大人の解釈によるステレオタイプな子供を描くことなく、2人の少女の目線で物語を描くことに徹底的にこだわった本作は、少女たちが新しい世界に踏み出していく時の息遣いや心の機微がリアルに伝わる、他にはない瑞々しく美しい成長物語に仕上がった。観客は子供の頃に経験したかけがえのない瞬間を思い出すだろう。
カンヌが絶賛!フランスと日本、国境を越えた才能の融合
『H Story』では『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』のベアトリス・ダル、『不完全なふたり』ではヴァレリア・ブルーニ・テデスキ(『ふたりの5つの分かれ路』)、オムニバス映画『パリ・ジュテーム』の一篇「ヴィクトワール広場」ではジュリエット・ビノシュなど、フランスの大女優たちから見事な演技を引き出し、カンヌ国際映画祭などフランスをはじめヨーロッパで圧倒的な評価を受けている諏訪敦彦監督。
そしてジャン=リュック・ゴダール、侯孝賢、アルノー・デプレシャンなど世界の巨匠の作品で活躍を続けているフランスの名優イポリット・ジラルド。2人は5年に及ぶ親交、そして前出の『パリ・ジュテーム』の諏訪監督の一篇「ヴィクトワール広場」にイポリットが出演した際、かねてより共同監督で作品を作りたいと考えていた諏訪監督がイポリットに声をかけ、本作の制作に至った。
父親であるという共通点を持つ2人は、子供の頃の親との関係や、自身の父親として印象に残っている出来事など、個人的な体験を話し合い、互いの家族とも交流した。そして主演の子供たちとも幾度となく手紙のやりとりをし、脚本を作り上げた。
撮影は諏訪監督がこれまでの映画で行ってきたように、脚本の台詞部分は空白にし役者の即興で作るという方法をとり、イポリット監督は役者として培ってきた感性で演出した。編集作業はそれぞれ日本とフランスで行い、時間をかけて何度もやりとりされた。国籍やバックグラウンドが異なる2人が日々意見を交わし丁寧に作り上げられた本作は、国を超えて誰しもの心に響く傑作となり、カンヌ国際映画祭〈監督週間〉でも大絶賛を浴びた。
小さな大女優
ユキ役を演じたノエ・サンピは、ユキの設定と同じく日本人とフランス人の血を引く9歳の女の子。初演技ながらも、ユキという役柄になりきり、この物語の鍵となる森での場面では全て自分の考えで演じきり、周囲を驚かせた。ノエと、ニナ役を熱演したアリエル・ムーテルは共に映画初主演だが、役者の即興で作り上げる、ベテラン俳優でさえ難しいその手法を受け止め、両監督の想像以上にこの作品を深く理解し、複雑な子供の内面を見事に体現している。
UAが歌う“親子の繋がり”
主題歌は絶大な人気を誇るUAがNHKの子供向け歌番組<うたううあ〜NHKドレミノテレビ>で歌っている沖縄民謡「てぃんさぐぬ花(はな)」。作品の内容を包み込むような童話的な響きを探していた諏訪監督が、親子の繋がりや愛情を伝えるこの歌に出会い、エンディングテーマとして使うことを熱望。その想いに応えてUAが鑑賞後に快諾、本作のラストに色を添え深い余韻を与えている。