山河ノスタルジア
山西省・汾陽<フェンヤン>。
小学校教師のタオは、炭鉱で働くリャンズーと実業家のジンシェンと幼なじみ。二人から想いを寄せられていたタオは、三人での友情を大切にしていた。内向的なリャンズーとは対照的に、自信家のジンシェンはタオの気を引こうとする。やがてタオはジンシェンからのプロポーズを受け入れ、傷心のリャンズーは街を出ていく決心をする。生まれた赤ん坊を抱きかかえるタオ。息子はドルにちなんで、“ダオラー”と名付けた。「チャン・ダラー。パパが米ドルを稼いでやるよ」タオはじっと、我が子を見つめていた―
タオはジンシェンと離婚し、一人汾陽に暮らしていた。ダオラーは父親のジンシェンに引き取られ、上海の国際小学校に通っている。離れて暮らす我が子への想いを胸に過ごすタオ。
ある日突然、タオを襲う父親の死。悲しみに暮れるなか、タオは葬儀に出席するためダオラーを汾陽へ呼び戻す。会えなかった息子との時間を埋めようとするタオだったが、彼がジンシェンと共にオーストラリアに移住することを知らされる。
オーストラリア。父親と共に移住したダオラーは19歳になっていた。彼は長い海外生活で中国語が話せなくなり、孤独な日々を過ごしていた。父親との間にも確執が生まれ自らのアイデンティティを見失うなか、ダオラーは香港から移住してきた中国語教師ミアと出会う。
自分と同じように異国の地で暮らすミアと心を通わせるうちに、いつしかダオラーはかすかに記憶する母親の面影を探しはじめる―。