産みの親と育ての親。我が子への愛の深さは誰にも推し量れない――。
大切な我が子がある日姿を消し、数年後に見つかったときは誰かの子どもになっていた。
愛する我が子を、その愛を、親は取り戻すことが出来るだろうか?
中国・深圳の街なかで、ある日突然姿を消した3歳の息子ポンポン。両親は必死で愛する息子を捜すが、その消息はつかめない。罪の意識と後悔に苛まれながら、かすかな希望を胸に国内中を捜し続けて3年後、ついに両親は深圳から遠く離れた農村に暮らす息子を見つけ出す。だが、6歳になった彼は実の親のことを何一つ覚えておらず、 “最愛の母”との別れを嘆き悲しむのだった。そして、育ての親である誘拐犯の妻もまた、子を奪われた母として、我が子を捜しに深圳へと向かう――。愛する我が子を、その愛を、親は取り戻すことができるのだろうか?
実際に起こった事件を基に、映画は大切に育ててきた我が子を失った“産みの親”の底知れぬ悲しみと恐怖、苦しみを丁寧に描きつつ、誘拐犯の妻である“育ての母親”の葛藤も繊細に描写する。子どもを失う苦しみを3年ものあいだ実の親に味わわせていたことへの懺悔、一方で非常識だと罵られても溢れでる子への愛……。「愛する我が子を誰にも奪われたくない。ただ一緒にいたい」という、すべての親が抱くシンプルで普遍的な願いを彼女もまた抱いているからこそ、その偽りない愛情に誰もが心を動かされずにはいられない。善か悪かのジャッジも、“子を奪われた被害者”と“子をさらった加害者”という関係性も超えた、親が子を思う「至上の愛」、子が親を慕う「無垢な愛」の深さにただただ、圧倒されるしかない。
年間20万人の子どもが行方不明に――。実際に起こった事件を基に、
名匠ピーター・チャンがあぶりだす現代中国の闇
監督は、『君さえいれば 金枝玉葉』『ラヴソング』といったウェルメイドなラブストーリーから、『ウォーロード/男たちの誓い』などのアクション大作まで、ジャンルは様々なれど人間の感情の機微を描くことにかけて定評があるピーター・チャン。本作は、年間20万人もの子どもが行方不明になっていると言われる中国で、実際に起こった事件が基になっている。2008年3月に誘拐された男の子が、3年後の2011年2月に両親のもとに帰ってきたという事件を取り上げたドキュメンタリーを見たピーター・チャンは「すぐにこの映画を撮らなければ」と早急に製作にとりかかったという。児童誘拐の背後に横たわる「拡大する経済格差」や「一人っ子政策」など現代中国が抱える問題を果敢にあぶりだした本作は、中国国内で公開されるや大ヒットを記録、社会に反響を巻き起こし、公開後には刑法の改正法案により誘拐された子どもや女性を買うことは重罪とみなすと規定された。
全編ノーメイクで撮影に挑んだヴィッキー・チャオの女優魂。
中国一のマネーメイキングスターがみせた新たな魅力
主演は、チャン・ツィイーらと並ぶ「中国四大女優」の一人と評されアジアで高い人気を誇るヴィッキー・チャオ。全編ノーメイクで誘拐犯の妻ホンチンを熱演し香港のアカデミー賞と呼ばれる金像奨で最優秀主演女優賞を初受賞したほか数々の主演女優賞に輝いた。ポンポンの父親ティエンを演じるのは、現在“中国一のマネーメイキングスター”として名高いホアン・ボー。『西遊記 はじまりのはじまり』などコミカルな演技で人気を博している彼が、本作では苦悩する父親を演じ新境地を拓いている。『レッド・クリフ Ⅰ&Ⅱ』のトン・ダーウェイ、『天安門、恋人たち』のハオ・レイ、本作で金鶏奨最優秀助演男優賞を受賞したチャン・イーら、いずれも実力と人気を兼ね揃えた俳優たちのリアリティ溢れる演技が、物語に真実味を与えている。