診療時間をとっくに過ぎた午後8時に鳴ったドアベルに若き女医ジェニーは応じなかった。その翌日、診療所近くで身元不明の少女の遺体が見つかる。それは診療所のモニターに収められた少女だった。少女は誰なのか? 何故死んでしまったのか? ドアベルを押して何を伝えようとしていたのか?あふれかえる疑問の中、ジェニーは亡くなる直前の少女の足取りを探るうちに危険に巻き込まれていく。彼女の名を知ろうと、必死で少女のかけらを集めるジェニーが見つけ出す意外な死の真相とは──。
作品を発表するごとにカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、2度のパルムドール大賞のほか、数々の映画賞を世界中で獲得しているジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督。本作も第69回カンヌ国際映画祭にパルムドール受賞作『ロゼッタ』以降7作品連続コンペティション部門に出品されるという快挙を成し遂げた。常に上質な映画を作り上げるダルデンヌ兄弟が今回題材に選んだのは“名もなき少女”に何が起こったのかを探るミステリー。ちょっとした判断の迷いから失ってしまった“救えたかもしれない命”。出られなかった電話や読み逃していたメール、そしてドアを開けなかったベルの音──「もしかして何かが変わったのではないか」と思わせる人生の転機はどこにでもある。その転機を探るうちに意外な真相にたどり着く。その真相への道のりの間に、主人公自身にも変化が起きる……。これまでにない極上のヒューマン・サスペンスが誕生した。
主人公のジェニーを演じるのは2013年にセザール賞助演女優賞、翌年には同賞主演女優賞受賞とフランス最大の映画賞を席巻し続けている若手実力派女優アデル・エネル。かねてからダルデンヌ兄弟のファンだったというアデルは、少女時代から女優として活躍し、妥協のない作品選びをし続けてきた。名もなき少女の死を受け入れきれない医者という難役をこなした本作の演技をレザンロキュプティブル誌は「彼女にふさわしい唯一の形容詞は『天才』だ!」と最大の賛辞を贈っている。今後、目の離せない女優の出現に映画ファンならずとも胸が躍る。
世界が誇る才能ダルデンヌ兄弟と天才女優アデル・エネル。彼らが作り上げた新たな傑作の力強さに誰もが圧倒されるだろう。