二度と取り戻せない、青春の息吹と輝き―。
ブルース・リーのファンで家族思いのアウェイ。手品が好きで「世界を変える」が口癖のアジェ。いとこ同士であり、親友でもあるふたりは隣家に住み、家族ぐるみで仲良く暮らしている。アウェイの双子の姉アミンは末期がんで自宅で療養している。
ある日、ふたりは暴力団組織が経営する店のツケの取立て屋になり、ピストルまで与えられる。調子に乗った彼らはどんどん羽目をはずし始め、すこしずつ歯車が狂いだす。時を同じくしてアミンの病状も次第に悪化してゆく・・・。
いわゆる「チンピラもの」の形を取りながら、本作はふたりの若者の青春模様を紡ぎだす。そこにはチンピラものにありがちな「男の生き様」ではなく、万国に共通する青春時代のキラキラと輝く時間が凝縮されているのだ。青春時代は短い。古くはニコラス・レイの『理由なき反抗』しかり、若さゆえの無鉄砲さから隣り合わせになってしまう「死」により、その限られた時間はさらに輝きを増すのである。