Bitters End
配給作品
『きらめきの季節
/美麗時光』
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リアルではないものから真実へ
 チャン・ツォーチ インタビュー


―『きらめきの季節/美麗時光』は、あなたの頭の中でどのようにして形づくられたのですか?

 いつものように極めて自然に形づくられました。死と盲人の肉体的なハンディキャップを扱った、私の前作『最愛の夏』に対する反応から、というのがひとつの理由です。「病気と死」というテーマを前作と異なる方法―すなわち、異なる順序で扱ってみたかったのです。
 さらに、古くからの友人ががんと戦っている姿をみたのも、理由のひとつです。生き延びるとはどういうことなのかを、考えさせられました。最初の考えではアウェイは姉と同様にがんで倒れるという設定でした。しかし、実際にがんになることなく、その徴候だけを受け継ぐというほうが面白い、と思ったのです。


―主演のふたりは前作『最愛の夏』にも出演していますが、なぜ、再び彼らを起用しようと思ったのですか?

 私はいつもプロの役者ではない人と仕事をしたいと思っています。実際、私の映画に出演しているほとんどの人はこれまで演技をしたことがない素人です。アウェイ役のファン・チィウェイの場合、『最愛の夏』で彼の魅力のほんの一部しか引き出せていないと感じていました。彼はもっとたくさんの可能性を持っていると思っていたので、その魅力をどこまでスクリーンに映し出せるか見てみたかったんです。とはいえ、ファンの魅力と素質はこの作品でも決して描ききれているとは思っていません。更に余地があるはずです。
 アジェを演じたガオ・モンジェは、『最愛の夏』の時に自分の演技について、非常に悩んでいました。彼はそれ以前にテレビには少し出ていましたが、映画は初めてでした。アジェ役の候補として考えていた何人かのひとりでしたが、彼こそがベストだと最終的に気づきました。ガオは非常に良い演技をしたと思います。
 この作品を編集している時に初めて気づいたんですが、主人公のふたりは私自身のふたつの面です。ふたり合わせると、私自身の自画像になるのです。


―ほかの出演者はどのようにキャスティングしたのですか?

 大半の人々は脚本を書く前に見つけているので、脚本を書く時に頭に浮かんでいます。ほとんどは、普段の生活の中で私が出くわした人々です。最も難しかったのはアジェの父親役のキャスティングでした。中国本土出身の退役軍人で、方言やなまりのある人が理想的でした。リン・ヘンバオを見つけるまでに3〜4ヶ月かかりました。彼を見つけてから、役柄を彼自身の経歴に非常に近いものに直しました。彼が今年1月に亡くなったのは非常に残念です。同様に、アウェイの父親役のティエン・マオインも最近亡くなりました。父親役を演じた両方の役者がこの作品が完成してから亡くなってしまったのです。


ビジュアル
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―細部については、どの程度事前に決めて、どの程度撮影現場で決めているのですか?

 実際、どちらの場合も同じくらいといえます。つまり、脚本に書かれている約半分が完成した作品に反映されているわけです。私はいつも、撮影するには様々な理由で不可能なことを脚本に書いています。例えば、ふたつのシーンでイルカを出したいと思っていました。ひとつはアジェが海岸で目覚めて、島に向かっていると分かるシーン、もうひとつはふたりが水中にいるラストシーン。島の周りの海には実際にイルカがいたのです。ただ、私たちにはイルカが現れるのを待つ余裕がありませんでした。ラストシーンでも、水中にイルカを連れてくることが出来なかった。反対に、時には撮影現場で起こったことが、脚本で思い描いていたよりもはるかに素晴らしい場合があります。ラストシーンでの水中のカンフーは、脚本になかったものです。しかしながら、結局のところ、完成した映画は、脚本で思い描いていたものとかなり一致すると言ってよいでしょう。大きな驚きはなかったと思います。

―役者にするように、キャメラマンにも指示をするのですか?

 私たちは10年以上、一緒に仕事をしているので、あまり指示をすることはありません。撮影部は、ほとんどの場合、私が何を必要としているか、好みの傾向を知っています。なので、キャメラマンの自由な意思と以前からの経験に基づいた慣習とが組み合わさっています。もし、撮影部のすることが気に入らなければ、彼らの手助けになるように、正確な指示を出します。ほとんどの場合、撮影は非常にスムーズに進みますし、彼らの判断を信頼できます。突発的な衝突があった場合は、酒を飲みながら話し合い、そしてともに正しい方向へと進みます。
音楽が予想と違ったのですが監督の指示なのでしょうか。
 音楽のチャン・イともずっと一緒に仕事をしていますが、いつも面白いものを生み出してくれると信頼しています。彼はエレクトロニックな音楽を最も得意としますが、この作品にはエレクトロニックなものは要らないと私は言いました。機械的ではない、例えばギターをかき鳴らすような肉体的な音楽が必要だったのです。私は、私が演出した最近のテレビ作品で用いた方法を使いました。チャン・イに撮影前に音楽を作ってもらったのです。毎日、撮影前に音楽をかけた結果、作品には無意識に音楽が浸透しました。


―前作と同様、現実と幻想の区別をつけていませんね。

 私自身が、そのふたつの区別のつけ方を知らないからです! 現実と幻想が異なるとは定義できません。最近の二作では、どこから現実が始まり、どこで幻想が終わるか明確にしていません。重要なのは、映画とは本来リアルではないものだということです。映画監督の仕事とは幻想を現実に転換し、真実ではあるけれども、リアルでないものを表現することだと私は思います。次の作品ではきっと、また違った描写を使うと思います。ただ、どのような描写になるのかは、私自身にも分からないのですが・・・。

2002年、台北・香港にて(インタビュアー:トニー・レインズ)