『きらめきの季節/美麗時光』の裏側
●これまでの作品同様、監督はシナリオを役者に見せないままに撮影は進んだ。「撮影の中で一番辛かったことは?」との質問に主演ふたりは口をそろえて「シナリオを見せてもらえないこと」と答えている。ラストの水中シーンを数テークも撮らされているにもかかわらず、だ。
●アジェの兄・アギィ役フー・ホァンジはチャン・ツォーチ作品には3度目の出演。実際に知的障害者である彼は前作同様本作でも助監督的な役割を果たした。予測不可能なリアクション、アジェとの兄弟関係のリアル感(アジェの「世界を変える」という発言や手品への傾倒ぶりも兄の状態と無関係ではないだろう)、川への飛び込みの不思議な目撃証言など、彼なしにはこの作品は成立し得なかっただろう。
●本作の役名はほとんどが本名となっている。范植偉(ファン・チィウェイ)は小偉(アウェイ)、盟傑(ガオ・モンジェ)は阿傑(アジェ)という具合だ。なるべく素人を使って映画を撮りたい、という監督のこだわりで、役者の素の部分と役柄をより近づけることに成功している。
●撮影は台北・新店・宣蘭で行われた。新店は台北市の南端に位置し、烏來への中継地点であるが、美しい湖があることでも知られている。宣蘭は台湾東北角海岸にあり、台湾第二の温泉郷と呼ばれる礁渓温泉を有し、マリンスポーツも盛ん。台北から日帰りで行けるため、観光地となっている。劇中にもその名が登場する「亀山島」はその地域のシンボルだが、2000年までは軍事管制区に指定されていた