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音楽:ジョシュ・オム

ジョシュ・オム

1973年5月17日、アメリカ、パームスプリングス生まれ。97年に結成されたバンド、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ(QOTSA)の中心人物。基本的にはギターヴォーカルだが、ピアノ、ドラム、ベースもこなす。QOTSAの他、元レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズとフー・ファイターズのデイブ・グロールと組んだスーパー・バンド、ゼム・クルックド・ヴァルチャーズとしても活動している。また、イギー・ポップ、フー・ファイターズ、PJハーヴェイ、プライマル・スクリーム、ザ・ストロークス、レディー・ガガ、アークティック・モンキーズなど、音楽ジャンルを問わず、有名ミュージシャンとのコラボレーションやプロデュースも多い。QOTSAとしては2013年にエルトン・ジョンやデイブ・グロール、ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーも参加した「ライク・クロックワーク」で全米1位を獲得。17年に発表した「ヴィランズ」では、アデルなどのプロデュースで知られるマーク・ロンソンをプロデューサーに迎え、これまでの骨太なロックとは一線を画したアルバムを完成させ、全英1位を獲得し、グラミー賞の最優秀ロックアルバム賞にノミネートされている。
これまでに手掛けた映画音楽はマルコ・ベルトラミと共作の『イノセント・ボーイズ』(02/ピーター・ケア監督)で、単独で映画音楽を手掛けたのは本作が初。ファティ・アキン監督はQOTSAの曲を聴きながら『女は二度決断する』の脚本を書いた。そして、オム宛に楽曲の使用許可依頼をラフカットと共に送ったところ、映画を気に入り、映画本編のサントラも引き受けることになった。

MUSIC LIST

テンプテーションズ “My Girl”

(カティヤとヌーリの結婚式)
言わずと知れたモータウンを代表する名曲。ラジカセから流れる「お金も地位も名誉もいらない。彼女がいれば幸せ」という歌詞に載せて、主人公カティヤとヌーリの獄中結婚式が描かれる。罪を犯したヌーリがこれから幸せな家族を作っていくのだろう、と予感させる。

187 Strassenbande “10 Jahre”

(ヌーリの事務所前で通り過ぎる車から聞こえる音楽)
ハンブルクに拠点を置く、ドイツを代表するギャングスターラップグループの曲で、意味は「10年間」。ハンブルクの街で大音量を出して通り過ぎる車がいたら、それはストリートギャングを意味する彼ら187 Strassenbandeの曲である可能性は高い。

コートニー・バーネット “Anonymous Club”

(ビルギットと出掛けた後、帰宅する車内BGM)
オーストラリアのシンガーソングライターの一曲。2013年発売の2ndEP「How to Carve a Carrot Into a Rose」収録。バーネットの魅力は、全力で唄わないヴォーカルとその歌詞の中にあるトゲ。悲劇に気付いたカティヤに、穏やかなこの曲はもう聞こえない。

クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ “The Bronze”

(ダニーロと話すカウンターバーでのBGM)
本作の映画音楽を手掛けるジョシュ・オムが所属するクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの1998年発売のアルバム「The Split CD」収録。裁判が思うようにいかないカティヤの苛立ちを表すような激しさと悲しさを併せ持つ。

フェイス・ノー・モア “Superhero”

(裁判後、カティヤがタトゥーを入れているときのBGM)
マイク・パットンがヴォーカルを務めるオルタナティブ・ロックの大御所。2015年に発売されたアルバム「ソル・インヴィクタス」収録。アキン監督の盟友E・ノイバウテンのアレクサンダー・ハッケによるリミックスもある。悔しさも虚しさも吹き飛ばす、ロックンロールは無敵だ。

インディ・ザーラ “The Blues”

(ギリシャのホテルでパソコンを開くシーン)
『消えた声が、その名を呼ぶ』で主人公の妻ラケルを演じたインディ・ザーラの2ndアルバム「Homeland」の一曲。モロッコの異国情緒あふれる楽曲が特徴的だ。容疑者たちを追いギリシャにやってきたカティヤがこの音楽を聴きながらパソコンを開くとき、彼女の心に最後の決断がよぎる。

リッキ・リー “I Know Places”

(エンドロール)
衝撃的なラストシーンから続くエンドロールに流れるのは、彼女の心境とシンクロする、胸に迫る歌詞。最愛の夫と子どもが暮らす場所には幸せは絶えず、これ以上傷つくこともない。祈りにも似た想いが込められている。監督がカティヤへ捧げた曲のようだ。