少年と自転車

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もうすぐ12歳になる少年シリル。
彼の願いは、自分をホーム(児童養護施設)へ預けた父親を見つけ出し、再び一緒に暮らすこと。

電話が繋がらない父を捜すため、シリルは学校へ行くふりをして父と暮らしていた団地へ向かうが呼び鈴を押しても誰も出ない。
シリルを探しにきた学校の先生から逃れようと、診療所に入り、そこにいた女性にしがみつき離れないシリル。
「パパが買ってくれた自転車があるはずだ!」とシリルは言い張るが、部屋をあけてもそこはもぬけの殻だった。

ある日、ある女性がシリルを訪ねてくる。先日の騒動の際にシリルがしがみついた女性、サマンサだ。
シリルの話を聞いて、自転車を探しだし、持っていたひとから買い取ってくれたのだ。
「乗ってたそいつが盗んだんだ!」と憤るシリル。

美容院を営むサマンサに週末だけ里親になることを頼みこみ、彼女と週末を過ごしながら、シリルは父親の行方を捜し始める。
自転車の売り主はガソリンスタンドにあった自転車を売る旨の貼り紙を見て、シリルの自転車を手に入れたという。
シリルが大切にしていた自転車を売ったのは父親だったのだ。

貼り紙から父親の住所を探し出し、ようやく父親と再会するシリル。
「金ができなくて迎えに行けない」
「気にしないで。携帯をもらったんだ。電話して」
不器用につかの間の父との時間を味わうシリル。
しかし、シリルに聞こえぬところでサマンサにシリルの父親は言う。
「重荷なんだ。会いたくないと伝えてくれ」

サマンサはその残酷な言葉を伝えようとするが、どんな言葉も見つからない。
「自分で言って」父親に言うサマンサ。
「……もう会いに来るな」
「電話くれるよね」
「わからない……しない」
そして、扉はバタンと閉められた。

サマンサはそれまで以上に真摯にシリルと向き合い始める。
恋人との間に軋轢が生まれるほどに、彼女はシリルを大切に思い始めていた。
どうしようもないほどに傷ついた心を抱えたシリル。
ふたりの心は徐々に近付いていくかに見えた。

けれど、ふとしたことで知り合った青年との関係により、シリルは窮地に追い込まれる……。

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