Bitters End
配給作品
『ばかのハコ船』
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Director's Notes<ばかのハコ船
BITTERS END shopping gallary
山下敦弘(『どんてん生活』)監督 最新作
ばかのハコ船
NO One's Ark

Director's Notes


 企画するにあたって、これだけはどうしてもやりたいと思うのが二つあって、一つは「地方を舞台にする」こと、そしてもう一つが「一組の男女を描く」ことだった。
 これは前作と全く正反対のシチュエーションになるわけで、むしろ正反対にしたいと思っていたからこういう考えになったのは当然なのかもしれないが、勿論理由はそれだけではない。「地方を舞台にする」の方から言うと、一番大きいのは、やっぱり自分達が地方出身者であるということだ。多感な10代を、中途半端な田舎で過ごしてきた記憶や思い入れは大きい。しかし、だからといって間違われてほしくないのは、我々が描きたいのは決して懐古主義的な郷愁ではないということ。都会に暮らす人々の中に地方出身者は多いと思うが、例えば彼等が自分達の出身地の話題を口にするとき、必ずといっていいほど照れてしまうのは何故か。申し訳なさそうに苦笑いして、恥ずかしそうに話すのは何故か。生まれてきた場所に対する劣等感もあろうが、それだけではないだろう。劣等感以外の何か他の原因、大袈裟にいえばその原因の一つを喜劇の要素として扱いたいと思っている。


ビジュアル
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 もう一つ、「一組の男女を描く」‥‥‥こう聞かされて、多くの人々は頭に「恋愛」という文字を浮かべるだろう。今回の物語でもやはり恋愛問題は絡んでくる。しかし、我々が重きをおきたいのはその「恋愛」を突き抜けた部分だ。以下の『主人公二人の背景』で詳しく述べるが、主人公の酒井大輔と島田久子は交際して7年になる。問題あっていろいろとケンカもしながら二人の関係は今日まで続いてきた。20代の若者が7年も付き合えば結婚も考えるのが当然のはずだが、この二人に限ってはどういうわけかそんな話は出た事がない。どちらかといえば惰性で続いてきた分が大きいだろう。「愛」ではなく「情」で繋がれている‥‥‥‥そんな腐れ縁とでも呼ばれるような二人を見つめれば、今までになかった新しい男と女の関係が現われてくるんじゃないかと思う。要するに「地方を舞台にした男と女の小さな話」を作りたかったわけです。


――山下敦弘(監督)、向井康介(脚本)