山下敦弘(『どんてん生活』)監督 最新作
NO One's Ark
90年代日本と『ばかのハコ船』 鑑賞メモ
あかじる
青菜を原材料にした決しておいしいとは言えない健康飲料「あおじる」は80年代末から90年代にかけて、「健康ブーム」とともに一部で爆発的な人気を呼んだ。こうした「健康食品」「健康飲料」が各社で開発販売されたのも経済的余裕があったから。この映画で主人公が販売する「あかじる」もそうした奇妙な健康飲料の本作オリジナル。
たまごっち
80年代から子供むけに小型コンピューターゲーム市場は拡大し、玩具メイカーも大量に小型コンピューターゲームを開発した。「たまごっち」は90年代初頭に、世界的にも生産が追いつかないほどの大ブームをおこした。小さな卵型のコンピューターの中でプログラムされた小動物が生きているという、バーチャルゲームのはしり。映画では発売されたばかりでまだブームが起きるなどとは誰も思っていない。
バブル
60-70年代の高度成長を経て、80年代の日本は世界で最も金持ちの国となった。株価や土地は高騰し、銀行は大金を投資し、円高は進むばかり。実体のない、にわか富豪が誕生する。しかし80年代末にそうした実体のない「ジャパニーズ・ドリーム」は一気に崩壊し、90年代には徐々に不況と失業の波が日本を襲った。この作品の背景は90年代初頭。この「バブル経済」の崩壊が始まった時代である。一般的にもこの「バブル」という経済の専門用語は流行し、今では「バブル」とは虚しい日本人の実体を象徴する言葉となった。
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