手持ちカメラで粘り強く主人公の夫婦を追うタノヴィッチは、どうしようもない貧しさをありのままに描きだす。彼らは抗議の声を上げることなど考えにも及ばず、ただ一日一日を生き延びてゆく。冬のくすんだイメージが、社会がめまぐるしく変わってゆく一方で置き去りにされた彼らの生活を、まるで運命のように見せる。
                  スクリーン・デイリー
この映画には訴えるべきメッセージが詰まっている。まるで主人公の人生が目の前で過ぎてゆくのを見るようだ。だからこそ観客は、彼の苦境を自分のことのように感じられる。
                  インディワイアー
現代ヨーロッパの辺境、極貧地区における貧困と人種差別を間近に捉えた本作には、感情をかきたてる力と美学的な厳格さが共にある。普遍的な人間ドラマであり、抑制されたスタイルで描かれた心動かされずにはいれない家族の物語だが、その底には冷たく燃える怒り、政治的な抗議の声が秘められている。
                  ハリウッド・レポーター
タノヴィッチの感動的な社会的リアリズムのドラマは、貧しいロマの家族の戦いを、つつましく抑えたスタイルで描く。衝撃的な差別の一例を、実際にそれを経験した人を起用して描くタノヴィッチは、低予算で手持ちカメラというスタイルで、ボスニア戦争中に撮影したドキュメンタリーのルーツに立ち戻っている。
                  ヴァラエティ
タノヴィッチは、映画の対象を敬意と威厳をもって扱っている。一家は貧しいが魅力的だ。そして主人公は、どんな絶望的な状況に追い込まれても冷静で、何かしら解決策を考えている。この映画はまるで個人映画のようであり、こうした主題がタノヴィッチにとって大事なものであることが良く分かる。
                  トゥイッチ