イントロダクション

世界中の映画祭が絶賛!ある新聞記事から生まれた実力派人間ドラマ

本作はウベルト・パゾリーニ監督が読んだガーディアン紙の記事に着想を得て生まれた。たったひとりで亡くなった方の葬儀を行う仕事ー。その記事を読んだパゾリーニ監督はそこになにか深く、普遍的なものを感じたという。孤独、死、人と人のつながり……。そして、ロンドン市内の民生係に同行し、実在の人物、出来事について綿密な取材を重ね、几帳面で誠実な地方公務員ジョン・メイの物語、『おみおくりの作法』が誕生した。
このくすっと笑えて、ちょっぴり切ない、心温まる静謐な物語は、 ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門でワールドプレミア上映され、感動を呼び、監督賞含む4賞を受賞、9月に行われた、なら国際映画祭のジャパンプレミアでも観客賞を受賞するなど、現在もなお世界の映画祭を席巻している。

ロンドン市、民生係 ジョン・メイ。あなたの旅立ち、心を込めて見守ります。

ロンドン市ケニントン地区の民生係、ジョン・メイ。ひとりきりで亡くなった人を弔うのが彼の仕事。事務的に処理することもできるこの仕事を、ジョン・メイは誠意をもってこなしている。しかし、人員整理で解雇の憂き目にあい、ジョン・メイの向かいの家に住んでいたビリー・ストークが最後の案件となる。この仕事をしているにもかかわらず、目の前に住みながら言葉も交わしたことのないビリー。ジョン・メイはビリーの人生を紐解くために、これまで以上に熱意をもって仕事に取り組む。そして、故人を知る人々を訪ね、イギリス中を旅し、出会うはずのなかった人々と関わっていくことで、ジョン・メイ自身も新たな人生を歩み始める……。
仕事の枠を越え、死者に対しても敬意を持って真摯に向き合う、それがジョン・メイの作法。誰もが迎える死の時間を、ジョン・メイはあたたかく心を込めて見守る。たったひとりで死んでしまったとしても、誰もが誰かと関わった経緯がある。そして、人との出会いこそが新たな人生を歩みだすきっかけになる……。ささやかで思いがけないラストシーンに胸が震える、かつてない感動作が誕生した。

長編初主演、エディ・マーサンの静かな熱演。『フル・モンティ』の名プロデューサー、ウベルト・パゾリーニ監督作

主人公ジョン・メイを演じるエディ・マーサンはイギリスを代表する実力派俳優。近年では『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』『思秋期』『戦火の馬』に出演、マーティン・スコセッシ、スティーブン・スピルバーグ、マイク・リー、ブライアン・シンガーなど錚々たる監督たちと仕事をしてきた名優である。繊細な感情の機微を見事に表現した初主演である本作の演技により、数多くの映画祭で主演男優賞を獲得している。また、NHKでも放送されている「ダウントン・アビー 華麗なる英国貴族の館」で本年もエミー賞の助演女優賞にノミネートされているジョアンヌ・フロガットがケリーを好演している。
監督は『フル・モンティ』などの愛すべき作品を生み出してきた名プロデューサー、ウベルト・パゾリーニ。プロデューサーとして高く評価され、すでに映画業界で確固たる地位を築いているパゾリーニ監督だが、本作でヴェネチア国際映画祭で監督賞を受賞するなど、監督としても高い評価を得ている。