キャスト

ジョン・メイ/エディ・マーサン

ジョン・メイ/エディ・マーサン Eddie Marsan

 1968年6月23日、イギリス・ロンドン生まれ。多数の受賞歴を持つエディ・マーサンは、同世代の俳優の中で最も敬意を払われる俳優のひとりである。マーティン・スコセッシ、スティーヴン・スピルバーグ、マイク・リー、ブライアン・シンガーら、業界トップの監督たちと仕事をしてきた。
主な出演作はテレビドラマシリーズ「レイ・ドノヴァン ザ・フィクサー」、『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』(14/エドガー・ライト監督)、『ジャックと天空の巨人』(13/ブライアン・シンガー監督)、ジョアンヌ・フロガットとも共演している『フィルス』(13/ジョン・S・ベアード監督)、『スノーホワイト』(12/ルパート・サンダーズ監督)、『戦火の馬』(12/スティーヴン・スピルバーグ監督)、『思秋期』(12/パディ・コンシダイン監督)、『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』(12/ガイ・リッチー監督)、『アリス・クリードの失踪』(11/J・ブレイクソン監督)、『Vフォー・ヴェンデッタ』(06/ジェームズ・マクティーグ監督)、『M:I:Ⅲ』(06/J・J・エイブラムス監督)、『21グラム』(04/アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督)、『ギャング・オブ・ニューヨーク』(02/マーティン・スコセッシ監督)など。また、マイク・リー監督作品『ヴェラ・ドレイク』(05)、「ハッピー・ゴー・ラッキー」(未)に出演、この二作で英国インディペンデント映画賞最優秀助演男優賞を獲得している。

エディ・マーサンによる『おみおくりの作法』

 私にとって、この映画の魅力は、脚本の繊細さでした。これは、人間は必ず死ぬのだということ、孤独、そして人生を分かち合うことを巡る、魅力的で美しい物語です。ウベルトの脚本はきわめて真摯で、心打つものがあります。生きること、死ぬこと、それに家族や共同体といった誠実な主題に基づいています。計算づくだったり、人の心を操ろうとしたりするようなものではないのです。この映画をユニークなものにしているのは、それが本当に心からのものだということです。だから私は出演したいと思いました。

 ジョン・メイのキャラクターを演じることは、俳優として独特なチャレンジでした。こういった葬儀を仕切る公務員がいるのは知っていましたが、それがどれだけ孤独で、変わったものなのかは、知りませんでした。彼らはひとりで仕事をするので、仕事としては特殊です。でも私は、ジョン・メイはひとりだけれど、孤独だとは思わなかったのです。ジョン・メイはあまり自己表現をしません。それだけに私が彼の考えていることを表現することが一層重要でした。それは彼の内側深くで起こっていることなのですが、これを演じるのは難しかった。というのも彼が感じていることをしっかり考えながら、しかもそれを外に出してはいけないわけです。でも、それがいいキャラクターを生んだのだと思います。彼は心を率直に見せるような人ではなく、複雑で、リアルな人物です。彼は誠実で、死んだ人について責任を持つことに安心と喜びを見出しています。彼はきちんとした生活を送っていて、仕事を失った時、逃げ場がなくなってしまい、真正面から人生に向き合わねばならなくなる。最後の仕事として、自分のアパートの真向いに住んでいたビリー・ストークの調査を始めた時、彼の生活は外に向かって開き始めるのです。ビリーは真向いに住んでいただけでなく、彼の乱雑なアパートはジョン・メイのアパートの鏡像で、それはビリーのカオスに満ちた生涯が、ジョンのきちんとした生活の鏡像であるように、距離だけでなくジョン・メイの生活と対になっています。そこで、彼は自分も死ぬのだと意識するようになるのです。ビリーの生涯の調査は、ジョンを地理的だけでなく、心理的な旅へと連れ出します。そして人生が、彼に平手打ちを食らわせるのです。

ケリー/ジョアンヌ・フロガット

ケリー/ジョアンヌ・フロガット Joanne Froggatt

 1979年8月21日、イギリス・ノース・ヨークシャー生まれ。日本でもNHK総合テレビとスターチャンネルで放送されている大ヒットテレビドラマシリーズ「ダウントン・アビー 華麗なる英国貴族の館」のメイド長・アンナ役で注目され、幾度もエミー賞にノミネートされている。イギリスを代表する若手女優である。
代表作としてエディ・マーサンと共演した『フィルス』(13/ジョン・S・ベアード監督)、『U Want Me 2 Kill Him/ユー・ウォント・ミー・トゥ・キル・ヒム』(14/アンドリュー・ダグラス監督)、2010年の英国インディペンデント映画賞で最優秀新人賞を獲得した“In our name”(未/ブライアン・ウェルシュ監督)などがある。映画、テレビドラマのほか、舞台でも活躍している。

ジョアンヌ・フロガットによる『おみおくりの作法』

 私はケリーを、善良な、普通の女性ととらえました。過去に深刻な傷を受けた記憶があり、父によって捨てられたことに苦しんできた。それで彼女は犬を相手に生きることにしたのです。ケリーは孤独を好む人物で、ジョン・メイに出会い、ふたりは友情を結び始めます。

 私は脚本のオリジナリティ、とても変わったストーリーに心を打たれました。こういう物語はいつでも私の心を惹きつけます。これまで考えたこともなければ、読んだこともない興味深い題材の、とてもよくできた物語です。それにエディが主役だと聞いて、もっと夢中になりました。彼の大ファンなのです! この映画は様々な問題に触れていますが、本質的には人生について、いかに他人と関係を持つか、孤独な人生の悲しみについての映画です。また、この映画の中には確かに悲しみもあるのですが、本当の温かさもあります。いかに他人同士が、相互理解と状況を通じてつながってゆくか。ケリーとジョンがお互いを助け合っていけるのか―そこに本当にいい関係が生まれるのかは分かりませんが(笑)。

 私はこうした映画がまだ作られているということにとても興奮を覚えました。ウベルトはシナリオを書き、監督し、製作をしていて、芸術面全般についてヴィジョンを持っています。そんな人と一緒にプロジェクトに関われるなんて素晴らしいことです。そういう人は情熱にあふれていて、それは伝染するのです。ウベルトは、キャラクターたちの感情のドラマに対する鋭い感覚と、視覚設計に関する素晴らしい目を持っています。こういうたぐいの映画こそ最良の仕事です。本当に愛情をもってやる仕事なのですから。

 エディとの仕事は私の期待通りでした。エディはいつだって素晴らしいのです! 彼は現在の最良のイギリス人俳優のひとりです。彼はいつだって、プロジェクトに対して何か違ったものをもたらしてくれる。本当にどこか変わっていて、でも本物である、という印象を与えるのです。見ていて本当に面白い。彼がしていることに惹き込まれてしまいます。彼と一緒に仕事ができて本当に楽しかったです。