イスタンブールから1000km離れた黒海沿岸の小さな村に住む13歳のラーレは、美しい5人姉妹の末っ子。10年前に両親が亡くなってから、祖母のもとで姉たち――長女ソナイ、次女セルマ、三女エジェ、四女ヌル――と、叔父のエロルと共に暮らしている。
ラーレの大好きなディレッキ先生がイスタンブールの学校へと異動になった日。下校途中、姉妹たちは男子生徒と海で騎馬戦をして遊ぶ。無邪気に男子の肩にまたがってはしゃぐ彼女たち。楽しげに帰宅した5人を迎えた祖母は怒りの形相で、長女ソナイから順番に折檻していく。「ふしだらなことをしたからよ。男たちの首に下半身をこすりつけるなんて!」隣人が祖母に告げ口したのだった。
この日以来、姉妹たちは外出を禁じられ、家に閉じ込められた。派手な洋服やアクセサリー、化粧品といった“不埒なもの”はすべてゴミ袋へ。携帯電話、パソコンと次々と没収され、戸棚にしまわれ鍵をかけられた。文字通り“カゴの鳥”となった彼女たちを待ち受けていたのは花嫁修業の日々。料理を習い、掃除をし、地味な色の服を着させられ……。村の女たちが毎日のように家にやってきては、姉妹たちに花嫁として必要なことを伝授していく。それは退屈な日々。
次々に見合い話がまとめられていく。婚礼の日。セルマは浴びるように自棄酒を飲み干す。酔って静かに涙を流すセルマに、「結婚したくないなら逃げて」とラーレは言うが、セルマは諦めたようにつぶやく。「どこへ逃げればいいの? イスタンブールは1000キロ先よ」
この夜が、5人姉妹が揃う最後の日となった。
ラーレは「その日」に向けて綿密な準備を始めた。祖母のへそくりから金を盗み、アリバイ工作用の人形に自分の髪を切って縫い付ける。そして、ラーレはついに強行する。運命を切りひらくための計画を――。