あらゆる中国的なイメージが長江・三峡には集中しているように見えます。絵画に描かれるような雲や雨、山といった伝統的中国もあれば、崩壊しつつある共産主義の中国もあり、興隆する自由主義の中国もあります。
たしかに、河、霧というのは中国の絵画で繰り返し現れる根本的要素です。ですから私はパン撮影を用いて、古典絵画の巻き軸のような動きを模して、空間を移動しているような感じを出しました。一方にはこうした自然美があり、他方にはある種の破壊の美がある。初めて建物の破壊を見たとき、本当に何かが終わるのだという印象を持ちましたが、それはまた、新しい時代の始まりでもあるのです。
一連の想像力に満ちた場面、シュールレアリスム的な場面が、映画に軽さやユーモアを与えています。特にあの建物が崩れ落ちる素晴らしい場面はどうやって生まれたのでしょう。
そうですね(笑)。たしかに私の映画ではこれまでなかったことです。しかしこれは中国では現実に起こることなのです。あの建物の崩壊は実際に私自身が体験したことなのです。ある日、中国東部のある都市で、友人と食事をしていたのですが、突然私たちの目の前で、巨大な建物が崩れ落ちたのです(笑)。本当にびっくりしました。その建物は半分完成しかかっていたのですが、造り終えるだけのお金がなかった。だから壊すことにしたそうです(笑)。
飛んでいくタワーは住民の移住を記念して市が建てたモニュメントですが、建設途中でお金がなくなり未完成のままです。三峡の美しい風景とあまりにそぐわないので、飛んでいって欲しいと思い、あのようなシーンを作りました。