3月15日(木)、都内にてAMERICAN EXPRESS 主催によるメンバーシッププレビューが開催されました。
トークイベントのゲストには、俳優でありラジオナビゲーターであり、「ショートショート フィルムフェスティバル」の主宰も務めていらっしゃる別所哲也さんをお迎えし、『少年と自転車』の魅力を語っていただきました。
そのトークイベントの模様をレポートいたします。
―心のセリフを読み解く楽しさ
伊藤さとりさん(ナビゲーター):
まずは『少年と自転車』をご覧になって、どういう風に思われましたか?
別所さん:
さすがカンヌ国際映画祭で常連のダルデンヌ兄弟の作品だなと思いました。
少年シリルの気持ちと、彼を応援する女性サマンサの気持ちと、子を持つ父親としての想いが重なり合って、胸に響いてきましたね。
ダルデンヌ兄弟の作品は、社会的な問題をオーガニックに扱っている点が特徴です。音楽などが派手なハリウッド映画と違い、自然に淡々と描かれていて、心のセリフを読み解く楽しさがあります。
―必見!少年トマ・ドレの演技
伊藤さん:
『少年と自転車』では登場人物それぞれの気持ちが手に取るようにわかりますよね。今回主演に大抜擢されたシリル役のトマ・ドレ君の演技には驚かされました。
別所さん:
僕もトマ・ドレにはびっくりしました。彼の目の動き、まばたき一つとっても、表情ひとつひとつに、その向こう側にある心の叫びや戸惑いを感じ取ることができました。
伊藤さん:
表情ひとつ、しぐさひとつ、背中ひとつで、感情を語っているような少年ですよね。
―別所さんイチオシのシーン!
伊藤さん:
クリント・イーストウッド監督の『ヒアアフター』にも出演していました、サマンサ役のセシル・ドゥ・フランスはいかがでしたか?
別所さん:
心が揺れる彼女の様子には見入ってしまいました。ひとつ、僕が気に入っているシーンがあって、彼女が美容室で電話をかけるシーンなんですが、ここはぜひチェックしてほしいですね。
―100年後、200年後も語り継がれる映画
別所さん:
ダルデンヌ兄弟の映画にはいつも、人間が持っている、あるいは社会が持っている、軋みやズレ、距離感といった不条理的なものが描かれていて、そこから弱者や家族に現れるものを映し出すので、カンヌ国際映画祭でも評価され続けているのだと思います。
またダルデンヌ兄弟の映画は、モーツァルトの音楽や芥川龍之介の文学のように、100年、200年経っても、人々に語り継がれる作品が、たくさんあるのではないかと思います。
僕の人生のテーマはお金をどれだけ儲けたかではなく、どれだけ自分が感動して、その感動を人と分かち合えたか、というものなのですが、『少年と自転車』には人と人がわかり合ったり、わかり合えなかったり…人間の根源的なものを表現している作品だと感じました。