『川の底からこんにちは』が商業映画デビュー作にも関わらずスマッシュヒットを飛ばし、2010年度ブルーリボン賞監督賞を史上最年少の27歳で受賞という快挙を成し遂げた、映画業界大注目の大型新人監督・石井裕也の最新作『あぜ道のダンディ』。
2008年にアジア・フィルム・アワードで第1回「エドワード・ヤン記念」アジア新人監督賞を受賞したほか、ロッテルダム国際映画祭と香港国際映画祭ですでに特集上映が組まれるなど、国内にとどまらず世界的にも注目されている監督です。
『川の底からこんにちは』で妥協だらけのOLを主人公に崖っぷち人生からの劇的起死回生を描いた石井裕也が、今度は男たる男が生きにくくなった平成ニッポンにおける50歳の男のダンディズムを撮りあげました。ダンディを貫く男の姿はユーモラスで涙ぐましい。派手ではないけれども不器用でまっすぐな男の生き様が、石井監督ならではのあたたかな目線でスクリーンに刻まれます。
宮田淳一と友人・真田、13歳。自転車であぜ道を走り、時にイジメられ、「カッコいい男になりたい」と涙をこぼす……サエない毎日。そして、ふたりは50歳になった。宮田は妻を早くに亡くし、ふたりの子どもと暮らしている。子どもたちとの会話はいつもかみ合わない。中卒で静かに配送業をこなす宮田の毎日。楽しみは仕事帰りに真田と居酒屋でひっかけるビール。
ある日、宮田は自分を胃ガンなのだと思いこむ。こんなこと、真田にしか相談できない。子どもたちに弱音など吐くものか。だって俺は「カッコいい男」なのだから。
大切な相手にこそ、弱みを見せず、前に出ないで思いやる。そんな一所懸命な男の生き様はカッコ悪く見えるかもしれないけれど、実はまっすぐでカッコいい!のです。
主人公・宮田淳一を演じるのは日本映画界に絶対に欠かすことのできない名バイプレイヤーであり、その映画出演本数が140本にものぼる光石 研。意外なことにデビュー作『博多っ子純情』以来33年ぶりの主演作です。妻に先立たれ、父ひとり子ふたりの生活の中、娘と息子とうまくコミュニケーションをとれない男の不器用さ、父親の愛情を体現します。
真田を演じるのはマルチな才能を見せ続ける田口トモロヲ。唯一の親友として、あたたかく、時にユーモラスに宮田を受け止めます。宮田の息子・俊也を演じるのは自身も監督であり、石井裕也監督作品には欠かせない若手俳優、森岡 龍。娘・桃子には『リアル鬼ごっこ2』のヒロインでデビューし、『わさお』でも印象を残した吉永 淳。さらに、岩松 了、西田尚美、藤原竜也といった豪華なメンツが集結、スクリーンを彩ります。
主題歌は21歳のシンガーソングライター清 竜人が本作のために書き下ろした「ホモ・サピエンスはうたを歌う」。楽曲製作時に「映画のストーリーと、その当時の自分の頭脳とが、なにかリンクした」というこの曲にはコーラスとクラップハンドとして光石 研、森岡 龍、吉永 淳、田口トモロヲも“宮田家と真田”として参加、エンドロールに温かな余韻を残します。