ファティ・アキン(監督・脚本)の言葉
すべての死は生誕である
映画を作ることは僕の人生の大きな一部だが、誕生や、愛や死と比べれば色あせる。成長するには、映画を3本は作らないといけないと感じている。三部作と言ってもいいが、それらは一体だ。愛と死と悪。『愛より強く』は愛について、『そして、私たちは愛に帰る』は死についての映画。死といっても、すべての死は生誕である、という意味だ。死も誕生も、新たな次元へ扉を開く。『そして〜』では何か別なレベルに達したいと思っていたのだけど、何かが欠けていて、それは悪をめぐる次回作で描くことになるだろう。何かを語るという行為は、いつまでも終わりがない気がする。この3本の映画は僕にとっての宿題だ。だから僕は前に進むことが出来る。
愛するということ
エリッヒ・フロムの「愛するということ」に大きな影響を受けた。僕は人間の関係に魅せられている。性的な意味でのボーイ・ミーツ・ガールみたいな関係だけじゃなく、親と子の関係もそうだ。すべての人間関係だ。世界中で起きている戦争も、愛を誤った方法で行使した結果なんだと、僕は信じている。僕は、悪は怠惰の産物だとも信じている。人を愛するよりは、憎むほうが簡単だからね。
トルコでの撮影
最終的に撮影を開始したのは2006年5月1日だった。撮影地はドイツのブレーメンとハンブルク、トルコのイスタンブールと、黒海沿岸、トラブソン。撮影は10週間にわたった。トルコは撮影地としてすばらしい。地理的な位置に恵まれているために、トルコの光には並外れたものがある。僕にとってイスタンブールでの撮影は、ニューヨークでの撮影に等しい。ともに魅力的で、国際的な都市、メガロポリスだ。『そして、私たちは愛に帰る』では、イスタンブールの都市そのものが実際ひとつのキャラクターなんだ。
二つの文化の間で
僕にはトルコとドイツ、ふたつの文化背景がある。僕はドイツで生まれ、ヨーロッパで教育を受けたが、両親とはトルコ語を話した。トルコの文化は僕の人生の一部であり続けてきた。子供の頃から、夏休みには毎年トルコに行っていた。僕はふたつの文化の間にいるから、僕の映画がその間で撮られるのは当たり前のことなんだ。
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