イントロダクション
あの男はいつも片隅に座っていた―。
1970年代ドイツに実在した
連続殺人鬼の物語。
敗戦がまだ尾を引いていた1970年代ドイツ、ハンブルク。安アパートの屋根裏部屋に住むフリッツ・ホンカは、夜な夜な寂しい男と女が集るバー“ゴールデン・グローブ”で酒をあおっていた。彼がカウンターに座る女に声を掛けても、いつも顔をしかめられるだけ。一見、無害そうに見えるフリッツの狂気に気づく常連客は誰ひとりいなかった……。
ドイツの名匠ファティ・アキン監督の最新作は、70年代ハンブルクで実際に起きた連続殺人事件の犯人フリッツ・ホンカの物語。第二次世界大戦前に生まれ、敗戦後のドイツで幼少期を過ごし、貧しさと孤独の中で大人になった男が、70年から75年に渡って4人の娼婦を殺害しながら過ごす日常を淡々と描く。知性溢れる天才犯罪者でも、何かに取り憑かれた狂人でもない、「ごく普通の連続殺人鬼」という、かつて味わったことのない“すぐ隣にいるかもしれない恐怖”に誰もが戦慄する。
世界が新作を常に渇望する才能、
ファティ・アキン監督最新作!
主演は美しさを封印した22歳の新星ヨナス・ダスラー!
30代で世界三大国際映画祭すべてで主要賞受賞の快挙を成し遂げ、前作『女は二度決断する』でゴールデングローブ賞外国語映画賞受賞、主演のダイアン・クルーガーにカンヌで主演女優賞をもたらしたファティ・アキン監督。ワールドプレミアとなったベルリン国際映画祭は熱狂! ファティ・アキン監督の演出力、主演ヨナス・ダスラーのパフォーマンスに称賛が贈られ、衝撃的な内容ゆえにベルリンで最も賛否両論を巻き起こした問題作となった。
ヨナスは、『僕たちは希望という名の列車に乗った』(19)でバイエルン映画賞新人男優賞を受賞した若手実力派俳優。本作では、実年齢よりも約20歳も年上のフリッツ・ホンカへ大変身し、ユーモラスで人間味がありながらも、観るものを縮み上がらせる狂気に満ちた演技で強烈な印象を残し、ヴァラエティ誌の「注目すべきヨーロッパの若手映画人10人」に選出された。
音楽を担当したのはアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンの活動でも知られるF.M.アインハイト。また、音楽通のファティ・アキン監督らしく、1960~70年代を代表する大衆曲の数々が映画世界を立体化させている。