ヴェルクマイスターとは?
本作のタイトルともなっている、"ヴェルクマイスター"とは何者なのか?映画の中で、老音楽家のエステルは、ヴェルクマイスターへの批判をテープに口述する。
こんなふうに・・・。
「恥ずべきことにこの数世紀の音楽作品の音程はすべて偽りであり、音楽もその調声もエコーも、その尽きせぬ魅力も、誤った音声に基づいている。大多数の者にとって純粋な音程は存在しないのである。」
「ここで想い起こすべきことは、もっと幸福だった時代のこと。ピタゴラスの時代だ。我々の祖先は満足していた。純粋に調声された楽器が数種の音を奏でるだけで。何も疑うことなく、至福の和声は神の領分だと知っていた。」
アンドレアス・ヴェルクマイスター
Andreas Werckmeister
(1645−1706)
ドイツ北西部の旧州サクソニーで、オルガン奏者そして音楽学者として働く。彼の一番重要な作品は「音楽の温度」"The Musical Temperature"(1691)である。ヴェルクマイスターは、鍵盤楽器は数学的に忠実にチューンするのではなく、ある間隔で、かろうじて聞こえる不純な音の瞬間を克服するために"調律/tempared"するべきだと提案した。言い換えると、不均等な半音と全音の数学的に"純粋な"調律は、漠然と調律した(それは少し"不純"である)ものに取って代わるだろうということだ。従ってヴェルクマイスターは、今日も使われている、1オクターブを12の半音で等分した責任者だ。よってヴェルクマイスターは、調律の技法を編み出した人物とも言え、その調律法を"ヴェルクマイスター音律"と言う。J・S・バッハとヴェルクマイスターが友人関係にあったことから、バッハが好んで彼の考案した音律を採用したとも言われている。
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