Bitters End
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『ある子供』
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カンヌ国際映画祭
1999年『ロゼッタ』パルムドール大賞・主演女優賞
2002年『息子のまなざし』主演男優賞・エキュメニック賞

そして2005年――
『ある子供』パルムドール大賞

史上5組目となるパルムドール2回受賞を果たしたベルギーの名匠ダルデンヌ兄弟。
『ある子供』で、彼らが初めて描いた“とめどなく溢れる涙”は、 希望を見出せない時代に射し込んだ、ひとすじの光。

*パルムドール大賞を2度受賞した監督:フランシス・フォード・コッポラ『カンバセーション…盗聴…』『地獄の黙示録』、ビレ・アウグスト『ペレ』『愛の風景』、今村昌平『楢山節考』『うなぎ』、エミール・クストリッツァ『パパは出張中!』『アンダーグラウンド』


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涙も、本当の愛も、命の重さも、何も考えずに過ごしてきた毎日。
この未来は変わるのだろうか――。

20歳のブリュノ。定職には就かず、仲間とともに盗みを働いて、その日暮らしをしている。恋人はソニア、18歳。ふたりの愛は、まるでじゃれあう子犬のようだ。ある日、ふたりの間に子供ができる。だが、ブリュノにはまったく実感がない。盗んだカメラを売りさばくように、ブリュノは子供を売る。それを知ったソニアはショックの余り倒れ、ブリュノは、その時になって初めて自分が冒した過ちに気づくのだが……。大人になる意味も知らず、その道筋にさえ気づいていないブリュノ。彼は、ただ“何も知らない”だけなのだ。涙も、働く汗も、本当の愛も、命の重ささえも。
現代の若者たちが抱える「私たちは大人になるのか、なれるのか」という困難を、厳しくも暖かな視点で見つめ、胸揺さぶる物語へと昇華させた本作。ダルデンヌ兄弟は、妥協のない彼らの映画スタイルを貫きながらも、これまでで最もエモーショナルな感動に溢れる新たな傑作を生み出した。

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21世紀を代表する名匠となった
ダルデンヌ兄弟。
その演出力から生まれる
映画のダイナミズム。

『ロゼッタ』、『息子のまなざし』、そして本作『ある子供』と、カンヌ国際映画祭にて3作品連続での主要賞の受賞と2度にわたるパルムドール大賞の受賞という快挙を成し遂げ、名実ともに21世紀を代表する名匠としての地位を不動のものとしたダルデンヌ兄弟。まるで現実かと思わせる演技、緻密な演出、完璧な脚本……息を呑みつづけた95分が終わった時、一瞬の沈黙ののち、カンヌの観客たちから惜しみないスタンディング・オベーションが巻き起こった。
本作は、ヒューマンなドラマであるとともに、映画本来のアクションとサスペンスに満ちている。子供から大人への軌道を大きく外れた若者の、その行動と呼応するような映画の速度と緊迫感。その演出力は、人に何かを考えさせるだけでなく、「映画であること」のダイナミズムをも強く感じさせる。
主人公ブリュノを演じたジェレミー・レニエは、ダルデンヌ兄弟の長編第3作『イゴールの約束』の主演で映画デビューを飾った後、フランソワ・オゾン作品のほか、つねに作品選びに定評ある若手俳優。本作ではあらためてその才能の豊かさを証明し、多くの人を驚かせた。また、本作では赤ん坊・ジミー役になんと21人の名前がクレジットされている。現実の一場面を生のまま切り取ったかのようなシーンのひとつひとつが、如何に計算され、準備がなされているかを、「21人のジミー」は物語っている。
さらに、『息子のまなざし』でカンヌの主演男優賞を獲得したオリヴィエ・グルメが刑事役を、『ロゼッタ』でロゼッタを支える友人・リケを好演したファブリツィオ・ロンジョーネが若いチンピラ役を演じているのも見逃せない。



ラストシーン。
まだ、希望はそこにある。

若年層の失業率が20%というベルギー。社会や経済の環境から発生した若者の問題に、ヨーロッパだけでなく世界が直面している。ブリュノやソニアは、決して特別な存在ではない。家庭に恵まれず、貧しさにさらされ、労働の価値も知らず、将来への期待を抱くことができない子供たちが、大人になれない若者たちになっていく。日本でも「NEET」や「引き篭もり」が増えているのは、どこかに同じ閉息感があるのかもしれない。この時代に、若者たちは未来への光を見つけることができるのだろうか。
「貧しい人たちにこそ、希望の光をわずかでも見せたい」――ダルデンヌ兄弟のことばの通り、成長していく若者の中にある可能性を見つめる本作のラストシーン。何かが激しく揺さぶられるように。何かを洗い流すかのように。誰かと何かを分かち合うかのように。そこにひとすじの希望の光があらわれる。