秀二(西島秀俊)はいつも兄の真吾からお金を借りて、映画を撮っている。秀二の映画が陽の目を見ることはほとんどなかったが、秀二は自分の映画と映画の持つ力を信じていた。最近の映画館ではなかなか観られないような映画を自主上映したり、“いわゆるエンターテインメント映画だけではなく、もっとアート映画を観るように”街中で演説をして警察に追われたり、同じく監督を志すナカミチ(鈴木卓爾)と映画談議をする日々。
ある日、真吾が借金のトラブルで死んだという知らせを受ける。ヤクザの世界で働いていた真吾は秀二のためにヤクザ事務所から金を借り、それがもとでトラブルになり、命を落としてしまったのだ。
何も知らずにいた自分を責める秀二。兄のボスである正木(菅田俊)から、真吾が遺した借金額が1,254万円であること、それを2週間以内に返済しなくてはいけないことを告げられ、秀二は途方に暮れる。
借金を返すあてもなく、兄が死んだヤクザ事務所を離れられない秀二。そこへ現れた正木の弟、高垣(でんでん)が秀二に「拳銃をくわえて引き金を引いたら金をやる」とからかい半分に持ちかける。
引き金を引く秀二だが、銃に弾は入っておらず、一命を取り留めた。それをきっかけに秀二はヤクザ相手に体を張って金を稼ぐこと―殴られ屋をすることで借金を返す決心をする。殴られる場所は兄が死んだ場所でなければ、兄の痛みを一緒に感じなければ殴られる意味がない、と考えた秀二は、ヤクザ相手に仕事をする陽子(常盤貴子)と組員のひとりであるヒロシ(笹野高史)を巻き込みながら殴られ屋を始める。
殴られるたびに自分の愛する映画監督たちが撮った作品を想い浮かべる秀二。何度殴られても、映画への愛情が秀二を支える。しかし、莫大な借金を簡単に返せるわけもない。追い打ちをかけるように、「出ていけ」と言われているにも関わらずヤクザ事務所で殴られ屋を続けていたため、ショバ代としてさらに金をむしり取られる秀二。それでも、この場所にこだわり続ける。
カネはもはや問題ではなくなっていた。
苦しさに耐えること、殴られても立ち上がること―それはどんなに汚されても、まだ光を失わない“映画”そのものの再生を信じているかのようだ。
秀二はすでに死を覚悟しているのだろうか。それとも、この試練に立ち向かうことで愛する映画を救おうとしているのだろうか……。