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●少年との出会いから生まれた奇跡の物語
ある日、ジャリリは板金工場で働く少年の瞳に目を奪われる。声をかけ、話を聞くと、彼にはちゃんとした名前も戸籍もないと言う。この少年が、主役のファルハードである。二人の運命的な出会いから本作『ぼくは歩いてゆく』が生まれた。 「子供たちを救うために映画を撮り続ける」と語るジャリリは、この少年のバックグラウンドを作品のテーマとして選び、脚本を仕上げ、撮影へと挑んだ。ジャリリは、少年と同じ目線に立ち、少年の表情、眼差し、言葉、日常に沸き起こる喜びや悲しみ、そして痛みまでもフィルムに刻んでいく。そこにすくいとられた少年の姿には、"生の輝き"、生きていくことの素晴らしさが溢れている。
*過去のジャリリ監督作品(『かさぶた』『7本のキャンドル』)解説へ

●人生を動かす一本の映画の力
映画はファルハード少年の体験に基づいている。少年は自分の人生を演じることで、さらに新たな体験をしていく。そのことによって映画の中で少年は生き、その少年によって映画は命を吹き込まれる。
映画出演が、後に少年の人生に大きな影響を与える。ジャリリの尽力で、撮影終了後、少年は今まで手に入れることのできなかった戸籍と身分証を取得する。また、数ある名前の中から「ファルハード」を選び、正式な名前として登録する。そしてついに、念願の学校へも通 い、文字を読み書きできるようになったのである。

○原題の"DON-ダン-"という言葉は、"知りなさい"(知るの命令形)という意味である。このタイトルは「全ての人間関係は、まず自分自身を、そして相手を知り理解することから始まる」というジャリリの考えから生まれた。

○少年の名前である「ファルハード」は、映画のためにつけられたものである。ジャリリは、イランの古い詩の中から「犠牲」という意味のその言葉を選び出した。この名前は、まさに少年の行動そのものを示している。