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小さな町で必死にもがく若者3人の12年を描くエモーショナルな傑作ドキュメンタリー!
「アメリカで最も惨めな町」イリノイ州ロックフォードに暮らすキアー、ザック、ビンの3人は、幼い頃から、貧しく暴力的な家庭から逃れるようにスケートボードにのめり込んでいた。スケート仲間は彼らにとって唯一の居場所、もう一つの家族だった。いつも一緒だった彼らも、大人になるにつれ、少しずつ道を違えていく。ようやく見つけた低賃金の仕事を始めたキアー、父親になったザック、そして映画監督になったビン。ビンのカメラは、明るく見える3人の悲惨な過去や葛藤、思わぬ一面を露わにしていくー。希望が見えない環境、大人になる痛み、根深い親子の溝…ビンが撮りためたスケートビデオと共に描かれる12年間の軌跡に、何度も心が張り裂けそうになる。それでも、彼らの笑顔に未来は変えられると、応援せずにはいられない。痛みと希望を伴った傑作が誕生した。
“トランプのアメリカ”の知られざる現実がここにある。
ロックフォードは、ラストベルト―鉄鋼や石炭、自動車などの産業が衰退し、アメリカの繁栄から完全に見放された<錆びついた工業地帯>にある。2016年の大統領選で、“夢を失った”ラストベルトの人々による投票がトランプ大統領誕生に大きな影響を与えた。映画完成時20代であったビン・リュー監督は、閉塞感のある環境で生きる若者たちの姿を通して、親子、男女、貧困、人種…さまざまな分断を見つめる。趣味のスケートビデオから始まったこの映画は、若者たちのパーソナルな物語でありながら、今の世界を映しだす奥行きをみせ、「21世紀アメリカの豊かな考察」(ニューヨーク・タイムズ)、「ドキュメンタリーの新時代」(WIRED)と評された。アカデミー賞、エミー賞Wノミネート、サンダンス映画祭をはじめ59の賞を総なめ、ロッテントマト100%と、全米の批評家・観客、そしてオバマ前大統領もが絶賛!2020年11月の大統領選でも改めて注目を浴びるであろうラストベルト。本作の主人公たちの等身大の物語を通して、未来のアメリカが見えてくる。


本作の舞台について
ラストベルト the Rust Belt
その名の通り、「さび付いた帯状の地帯」。正確な境界線はないが、ペンシルバニア州周辺からオハイオ州、ミシガン州、インディアナ州、ウィスコンシン州、そして、イリノイ州あたりまでの東部から中西部にかけての五大湖周辺の場所を指す。アメリカのかつての製造業や重工業の中心地で、1970年代ごろまでは「工場ベルト」「鉄鋼ベルト」「産業ベルト」と肯定的な名前がついていた。「五大湖メガロポリス」などという言葉すらあった繁栄の象徴で、かつてはここにアメリカンドリームがあった。しかしその後、グローバル化によって国内の製造業が中国やメキシコなどの国に出ていく中で産業は衰退し、土地は豊さを失った。職も夢も失ったラストベルトの人々の投票が鍵を握り、2016年の大統領選でトランプ大統領が勝利を収めた。ラストベルトの動向は、2020年11月の大統領戦でも注目を集めている。
1989年生まれ。
ビン・リューは、8歳になるまでに、中国、アラバマ、カリフォルニア、イリノイ州ロックフォードと母親と共に移動した。10代からスケートビデオを作り、撮影、編集スキルを磨いた。
19歳のとき、シカゴへと引っ越し、フリーランスのグリップ(撮影助手)として働きながら、イリノイ大学文学部で文学士号を取得、極めて優秀な成績で卒業。23歳で、国際映画撮影監督組合(International Cinematographers Guild)に入り、スパイク・リー、ウォシャウスキー姉妹の作品に携わるなど、劇映画やテレビシリーズの撮影部で働く。
2018年に、『行き止まりの世界に生まれて』で監督デビュー。サンダンス映画祭ブレイクスルーフィルムメイキング賞を皮切りに国内外で59の賞を受賞し、アカデミー賞、エミー賞のドキュメンタリー部門でWノミネートの快挙を成し遂げる。米ヴァラエティ誌の「注目すべきドキュメンタリー監督10人」選出。アメリカの教育制度における人種間の不平等を検証した、スティーヴ・ジェイムス製作ミニシリーズ「America to Me」の3話を監督している。
DIRECTOR’S MESSAGE
『行き止まりの世界に生まれて』はスケートビデオとして始まり、スケートボーダーの友人たちが、自分の親との関係について語る中で、パーソナルな真実を探究していく映画へとなっていきました。

僕が8歳のとき、シングルマザーだった母がロックフォードに仕事を見つけ、引っ越しました。そこで母は、身体的にも精神的にも暴力をふるう男と再婚し、17年間一緒にいました。継父はすぐにかっとなり、気まぐれに暴力をふるったので、僕は世界を因果関係に欠けるものとして認識していました。13歳で、家から逃れるようにスケートボードを始めました。たくさんのアザ、骨折、苦労してできるようになった技の数々を経て、僕は自分の痛みに対してのコントロール感覚を取り戻し、物事を理解していきました。何よりも大切なのは、家にいるよりも、アウトサイダーの集団の中にいる方が何倍も幸せだと気づいたことです。僕たちは数えられないほどの時間を共にして、自分たちの家族を作り、スケートビデオを通して自分たちの現実を作っていきました。

20代にかけて、僕はシカゴへ引越し、教師になるべく勉強をはじめました。卒業後、僕は撮影監督組合の撮影部で働き、その傍らショートドキュメンタリーを作っていました。当時は、自分の暗い過去から逃げ切って、もう振り返る必要なんてないと感じていました。でも、無視できませんでした。多くの仲間たちが薬物の犠牲になり、刑務所行きになり、中にはそれよりもひどい場合もあることを。「Look At Me」というスケートドキュメンタリーを制作中、僕は、メンタルヘルスや人間関係、子育てのスタイルに何かしら悪影響を与えている、父親の不在や確執、父親からの暴力のパターンに気がつきました。それを次のプロジェクトのテーマにしようと決めました。セントルイスからフェニックス、ポートランド、その他たくさんの場所でスケートボーダーたちを撮影する中で、1人のインタビューが突出していました。僕の故郷ロックフォード出身の16歳のアフリカ系アメリカ人の少年、キアー。彼は今まで父親との関係について話したことがなく、初めてのインタビューのときはセーターの袖をいじっていました。彼が父親の暴力について話してくれたとき、僕は胸を締め付けられました。 その後4年にわたり、キアーと、カリスマ性のある人物で、父親になろうとしている23歳のザックを追いました。『ガンモ』、『ウェイキング・ライフ』、『KIDS/キッズ』、『スラッカー』といった、不確実な世界で育つことを描きながら、どこか希望があって、僕の混沌とした子ども時代を意味のあるものにしてくれた物語の数々からインスピレーションを得ました。

明確になったことは、暴力と、暴力によってクモの巣のように広がる影響は、大部分で永続されてしまうということです。これらの問題は文字通りにも比喩的にも、扉の向こうに留まってしまうから。僕の願いは、『行き止まりの世界に生まれて』の中で扉を開いてくれた登場人物たちによって、同じようなことで苦労している若い人々が勇気をもらい、彼らがその状況を切り抜けられること、生きて、自分たちの物語を伝えられること、そして自分たちの力で人生を作っていけるようになることです。
プロデューサー
ダイアン・クォンDiane Quon
NBCとパラマウント・ピクチャーズのマーケティング部長としてLAで勤務した後、故郷シカゴへ。プロデューサーとして、シカゴ・トリビューン紙の美術批評家ハワード・ライヒと共に「Left-Handed Pianist」(18/レスリー・シメール、ゴードン・クイン共同監督)、「The Dilemma of Desire」(20/ マリア・フェネッツォー監督)に携わる。 現在ニューヨークタイムズのベストセラー「あの日、パナマホテルで」をもとにした劇映画を企画準備中。
エグゼクティブ・プロデューサー
スティーヴ・ジェイムスSteve James
同年代で最も尊敬を集めるドキュメンタリー作家であり、エミー賞、 DGA、PGA、IDA、インディペンデント・スピリット賞、シネマ・アイ・オナーズ賞など、キャリアを通して数多くの賞を受賞している。 監督としての代表作『フープ・ドリームス』(94)は、アカデミー賞にノミネートされ、サンダンス映画祭観客賞、ロバート・F・ケネディ・ジャーナリズム賞、シカゴ映画批評家協会作品賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞ドキュメンタリー賞など数多くの賞を受賞、『スティーヴィー』(02)は、サンダンス映画祭最優秀撮影賞、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭大賞、山形国際ドキュメンタリー映画祭最優秀賞などを受賞している。製作総指揮をつとめるミニシリーズ「America to Me」は2018年のサンダンス映画祭でプレミア上映され、シネマ・アイ・オナーズTVシリーズ部門賞を受賞、クリティクス・チョイス・アワードドキュメンタリー部門にノミネートされるなど高く評価されている。
エグゼクティブ・プロデューサー
ゴードン・クインGordon Quinn
アメリカの老舗ドキュメンタリー映画製作会社カルテムキン・フィルムズ共同創業者。過去50年以上にわたり、何百人ものドキュメンタリー監督たちのプロジェクトを前進させ、権利をサポートしてきた。2015年、国際ドキュメンタリー協会功労賞を受賞。
編集
ジョシュア・アルトマンJosua Altman
10年以上のキャリアの中で多くの受賞歴を持つドキュメンタリー映画監督であり、編集者。編集者としての代表作に「We Live in Public」(09/サンダンス映画祭審査委員賞受賞)、「The Tillman Story」(11/アカデミー賞ドキュメンタリー部門ショートリスト) 、「ボーンズ・ブリケード」(12/iTunesでドキュメンタリー第1位)など。脚本編集をつとめた「Code Black」は LA映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞し、後にCBSで『コード・ブラック 生と死の間で』としてシリーズドラマ化されている。近作に、オバマ政権最終年の外交政策チームを追ったHBOのドキュメンタリー「The Final Year」(17)がある。
音楽
ネイサン・ハルパーンNathan Halpern
2017年にミニシリーズ「Soundbreaking」でエミー賞にノミネート、Indiewireの「注目すべき作曲家」に選ばれている。代表作に、エミー賞、ピーボディ賞受賞「MARINA ABRAMOVIC: THE ARTIST IS PRESENT」(12)、サンダンス映画祭ドキュメンタリー部門審査員賞を受賞した「Rich Hill」(14)、2017年アカデミー賞のショートリスト入りを果たした「Hooligan Sparrow」と「The Witness」。 近作に、『ザ・ライダー』(17/カンヌ国際映画祭監督週間芸術映画連盟賞受賞)、「真夏の体温 (ONE PERCENT MORE HUMID)」(17)、 「Swallow」(19) など。
音楽
クリス・ルッジェーロChris Ruggiero
代表作に、2016年サンダンスでプレミア上映されたナンフー・ワン監督「I Am Another You」や「Hooligan Sparrow」など。ミニシリーズ「Soundbreaking」で2017年にエミー賞にノミネートされている。 また、タコベルやコカコーラなど多くのブランドのために音楽制作もしている。自身のスタジオ「Gold Coast Recorders」でバンドやアーティストのレコーディングやプロデュースを行い、ブリッジポート大学で映画、サウンド、記号論について講義を行い、人気のオーディオ・ヒストリー・ウェブサイト「Preservation Sound」を運営している。
感動的で、示唆に富む。ただただ惚れ込んだ。
バラク・オバマ
アメリカ前大統領
とてもとても素晴らしかったです。
ジャンルを超えて、撮るとは、どういう行為なのか?改めて考えさせられつつ、 登場人物の全てを断罪することなく、愛おしみながら向き合おうとする監督の真摯な姿勢に胸が熱くなりました。
是枝裕和
映画監督/『万引き家族』『真実』
果てしなく夢中になった。この映画の心はとてつもなく大きい。
バリー・ジェンキンス
映画監督/『ムーンライト』
心を動かされた。静かで、ヒリヒリしていて、残酷なほどに正直。
スケートへの愛を通じて救われていく若者たちの姿を通して、暴力の連鎖を断ち切ろうというメッセージを伝えることにビンは見事に成功している。見逃してはいけない。
トニー・ホーク
プロスケーター/通称“スケートボード界の神”
素晴らしい。思いもよらない展開に、胸が張り裂けそうになった。
ショーン・ベイカー
映画監督/『フロリダ・プロジェクト』
『はちどり』が女性たちの痛みを描いたように、この映画は少年たちの傷をえぐり出す。
スケボーでも逃げられないその傷に彼らがついに立ち向う時、涙があふれない人はいないだろう。
町山智浩
映画評論家
マキヒロチ
漫画家/『いつかティファニーで朝食を』『SKETCHY』
自分らしく生きたい」ともがけばもがくほど、理不尽な社会の闇に引きずりこまれてしまう。その重く苦しい闇の中で必死に生きる三人の姿は、不器用ながらどこまでも真っすぐで、応援せずにはいられない。優しさと希望に満ちた映画。
井之脇海
俳優
なんの準備も支えもなく、先が見えない一度きりの人生を進んでいかなければいけない少年たちの、孤独と不安、焦燥や苛立ちが胸に迫る。
カメラ越しに見つめること、話すことが、彼ら自身を助けてくれることを願わずにはいられない。
柴崎友香
小説家
本作を観ると、私たちがアメリカに抱くイメージはハリウッド映画によって捏造されているのだとよくわかる。12年間スケーター仲間を撮り続け辿り着いた現実は家族の喪失とDVの蔓延する見捨てられたアメリカだった。
スケーターたちよ!どこまでも路上を滑り新しい部族を創り続けてくれ!ゴッドスピードユー!
空族
映像制作集団/『サウダーヂ』『バンコクナイツ』
アメリカの最も困窮したラストベルトで生きる3人の若者の困難、あらゆる社会問題を内包しながら肉体に刻むように記録した驚異のパーソナル・ドキュメンタリー。
スケボーに宿る走馬灯のような疾走感に救いや神聖を感じた。まぎれもなく大傑作!
水道橋博士
お笑い芸人、タレント
自分を肯定し
客観的に人生をみつめ、
フィルムという武器で己の闇と戦い
世界に立ち向かう若き監督の様は
何より素晴らしく
たくさんの人にみて欲しいと思った。
きっと同じような境遇の人はもちろん
すべての人が自分を肯定する力をもらい
多大な勇気をもらうだろう。
一青窈
歌手
彼らにとってスケボーは、社会と自分の間にある溝や世代間のギャップを超えていく、かけがえないもの。
空を飛んでいるようなスケートシーンの疾走感、爽快感、そしてひたすら前に進んでいく彼らの姿に希望を感じ、胸が熱くなる!
ダースレイダー
ラッパー
かつて、僕がいた場所を見ているみたいだった。昔の自分がそこにいて、そこから今へ続いている。何処かに逃げ出したくなるような、だけどそこへまた戻っていく。僕の仲間のドキュメンタリーを見ているように感じた。
江川芳文
Hombre Niñoディレクター、XLARGE デザイナー
転落と成長、虐待と希望、暴力と友情…。
人生って惨めで稚拙で愚かだけど、だからこそ抱きしめたい。
あらゆる「いまこの瞬間」が詰まっているような素晴らしい作品。
佐々木俊尚
作家・ジャーナリスト
そこかしこにある、底の可視化——。
「潜入」でも「密着」でもない、人生で一度の、生身のドキュメンタリー。
荻上チキ
評論家・ラジオパーソナリティ
仲間にしか発さない言葉がある
仲間にしか見せない表情がある
リュー監督のカメラは、それらを記録した
現代アメリカが見事に描かれていた
金成隆一
朝日新聞/「ルポ トランプ王国」「記者、ラストベルトに住む」筆者
映し出されているのは、切なくて淡い日常。けれどもその奥に、社会の歪が凝縮されている。
連鎖する貧困、暴力、人種差別、その渦の中で生き抜く彼らの軌跡が、胸に迫る。
安田菜津紀
フォトジャーナリスト
友人たちの苦悩を追った小さな世界の話にとどまらず、行き場のないラストベルトの若者に共通する非常に公的な想いを共有している物語だ。
彼らが次のアメリカ大統領の大きな鍵を握っている。これからの政治を占う映画だ。
前嶋和弘
上智大学教授/現代アメリカ政治外交
この国でこの親でこの時代に育つとこうなる。誰が決めた?
愛情は隆起や沈降するが常に体内にある。
スケボーは3人のエネルギー調整機。
私は何やったやろ?ピアノかな。
綾戸智恵
ジャズシンガー
息もできないほどに忘れられない映画体験。
ROLLING STONE
伝説的で、感動的!輝いている。
SOUNDVENUE
心が張り裂けそうなほどに嘘がない。これは真実の映画だ。
FILM COMMENT
「ドキュメンタリー新時代」の幕開けだ。
不愉快な沼地のような現実のなかで、この映画は「癒し」と「傷つくこと」の間にある。
隠れていたものを暴き、痛みに満ちていて、闇に包み込まれていながらも、希望がある。
WIRED
★★★★満点!
自分を見つけ、夢を諦めず、生き延びて本当の幸せを探す、パワフルな冒険物語。
STAR TRIBUNE
21世紀アメリカの豊かで衝撃的な考察。
この10年で最も悲痛であり、最も希望のある映画の1本。
THE NEW YORK TIMES
圧巻!
知的で、思いやりのある映画だ。
LOS ANGELES TIME
壊れたアメリカについて描く驚くほどに勇気のある映画。
シネマトグラフィも驚異的!
EXCLAIM!
スケートビデオ、小さなストーリーの真ん中で、有毒な男性性(マスキュリニティ)、家庭内暴力、崩壊した家族生活、地方の不景気、階級や人種間の根深い問題といった、アメリカにおける 今日的で豊かな洞察が行われている。
SAD MAG
大人でも子どもでもない “狭間”の時代にそれぞれ違った道を辿る、3人の友人たちのポートレート。
デビュー作にして成熟した素晴らしいストーリーテリングを監督は見せてくれた。
SCREEN ANARCHY
新鮮で、驚きに満ちている。
ALTERNATE ENDING
ミレニアル世代による力強く見事なドキュメンタリー!
BBC
敬称略