監督は、フェリーニ、ヴィスコンティなどの豊かなイタリア映画史の遺伝子を確かに受け継ぎながら、
革新的な作品を発表し続けているアリーチェ・ロルヴァケル。カンヌ国際映画祭において『夏をゆく人々』(15)でグランプリ、
『幸福なラザロ』(19)では脚本賞を受賞。マーティン・スコセッシ、ポン・ジュノ、ソフィア・コッポラ、グレタ・ガーウィグ、
ギレルモ・デル・トロ、アルフォンソ・キュアロン、ケリー・ライカートらがファンを公言したり、製作のバックアップに名乗りをあげるなど、
世界中の映画人がその唯一無二の才能に惚れこんでいる。
スコセッシ、ポン・ジュノ、グレタ・ガーウィグら
世界中の映画人が惚れ込んだ
アリーチェ・ロルヴァケル監督(『幸福なラザロ』)最新作
ギリシャ神話の悲劇のラブストーリーをモチーフにした
《幻想》を追い求める墓泥棒たちの数奇な物語
80年代、イタリア・トスカーナ地方の田舎町。忘れられない恋人の影を追う、考古学愛好家のアーサー。
彼は紀元前に繁栄した古代エトルリア人の墓をなぜか発見できる特殊能力を持っている。
墓泥棒の仲間たちと掘り出した埋葬品を売りさばいては日銭を稼ぐ日々。
ある日、稀少な価値を持つ美しい女神像を発見したことで、闇のアート市場をも巻き込んだ騒動に発展していく…。
夢、富、忘れられない愛する人――これは人の果てなき探求を描く物語。最愛の人の影を追うアーサーの姿は、亡くなった妻を生き返らせるために
冥界に赴いたギリシャ神話「オルフェウスとエウリュディケ」の悲劇のラブストーリーを想起させる。
今作はロルヴァケル監督作品のなかでも最も切なくロマンチックな物語だ。
生と死、空想と現実の境目を自由自在に飛翔するマジック・リアリズム。
まるで美しいトスカーナの迷宮に踏み込んでいくかのような、めくるめく幻想譚を堪能あれ。
そして、愛の幻想を彷徨う男が冒険の果てに見つけたもの。
魂の自由を賛美する恍惚のラスト、あなたもきっと心を奪われるに違いない。
ジョシュ・オコナー(『チャレンジャーズ』)×イザベラ・ロッセリーニ(『ブルーベルベット』)ら
豪華キャスト共演
『幸福なラザロ』に感銘を受けたオコナーが出演を熱烈オファー
アーサーを演じるのは、新世代の英国若手俳優を代表するひとりとしていま間違いなく名前が挙がるジョシュ・オコナー。
『ゴッズ・オウン・カントリー』やチャールズ皇太子に扮したドラマ「ザ・クラウン」シリーズで高く評価され、
『チャレンジャーズ』ではゼンデイヤ演じる主人公らと三角関係になる役柄を演じ話題沸騰。
『幸福なラザロ』を観て感銘を受けたオコナーがロルヴァケル監督作品への出演を熱望し手紙を送ったことが本作の主演を務めるきっかけに。
アーサーの恋人の母フローラを演じるのは、映画界の至宝ロベルト・ロッセリーニ監督の娘であり、
『ブルーベルベット』で知られるイザベラ・ロッセリーニ。また、監督の実姉であり、常連俳優のアルバ・ロルヴァケルがスパルタコ役で出演。
撮影を務めるのは、これまでにも数多くのロルヴァケル監督作品を手がけてきたエレーヌ・ルヴァール。
35mm、16mm、スーパー16mmと複数のフィルムを交互に使い分けて撮影し、
リアリズムとファンタジーの境目を鮮やかに映し出している。
墓泥棒が探すのは、お宝か愛か―。
80年代、イタリア・トスカーナ地方の田舎町。考古学愛好家のイギリス人・アーサー(ジョシュ・オコナー)は、
紀元前に繁栄した古代エトルリア人の墓をなぜか発見できる特殊能力を持っている。
墓泥棒の仲間たちと掘り出した埋葬品を売りさばいては日銭を稼ぐ日々。
そんなアーサーにはもうひとつ探しているものがある。それは行方知れずの恋人・ベニアミーナだ。
ベニアミーナの母フローラ(イザベラ・ロッセリーニ)もアーサーが彼女を見つけてくれることを期待している。
しかし彼女の失踪には何やら事情があるようだ…。
ある日、稀少な価値を持つ美しい女神像を発見したことで、闇のアート市場をも巻き込んだ騒動に発展していく…。
監督・脚本:アリーチェ・ロルヴァケル
Alice Rohrwacher
1981年12月29日、イタリア・トスカーナ州フィエーゾレ出身。ドイツ人の父とイタリア人の母を持つ。トリノとポルトガル・リスボンで学び、劇場での作曲や編集の仕事を経た後、映画に惹かれてドキュメンタリーの編集者として働き始める。2011年、初の長編劇映画で南イタリアのレッジョ・カラブリアを舞台に思春期の少女の葛藤と成長を描いた『天空のからだ』が第64回カンヌ国際映画祭監督週間部門に出品され、各地の映画祭で上映された。自身の体験をもとに養蜂家の家族を描いた『夏をゆく人々』(15)は長編2作目にして第67回カンヌ国際映画祭グランプリを受賞し、現代の聖人ラザロを実際の詐欺事件を通して描いた長編3作目『幸福なラザロ』(19)は第71回カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞。北米公開時には、マーティン・スコセッシがその才能を絶賛し、映画完成後にプロデューサーに名乗りを上げた。2015年、ファッションブランド・ミュウミュウの企画で、女性監督が21世紀の女性らしさを鋭い視点で称えるショートフィルムシリーズ「女性たちの物語」の第9弾として「De Djess」を発表。2016年、イタリアのレッジョ・エミリア市立劇場でオペラ「椿姫」を演出。2020年、イタリア国営放送RAIとHBO合作のTV シリーズ「マイ・ブリリアント・フレンド」シーズン2で共同監督を務める。2021年、ピエトロ・マルチェッロ、フランチェスコ・ムンズィと共同監督でティーンエイジャーの目を通して現在のイタリアのポートレイトを掘り下げたドキュメンタリー「Futura」を発表し、第74回カンヌ国際映画祭監督週間部門に出品された。2022年、アルフォンソ・キュアロン監督がプロデューサーとして参加したDisney+オリジナルの短編映画『無垢の瞳』が第95回アカデミー賞®短編映画賞にノミネートされた。世界中の映画人がその才能に惚れ込み、いまやイタリア映画界を代表する監督の一人である。
※年数は制作年を記載。カッコ内は劇場公開、
映画祭、特別上映などの日本公開年。
<Movie>
- 2006 Checosamanca(ドキュメンタリー)
- 2011(2012) 天空のからだ
- 第64回 カンヌ国際映画祭 監督週間部門 正式出品
- 2014(2015) 夏をゆく人々
- 第67回 カンヌ国際映画祭 グランプリ
- 2015 De Djess(短編映画)
- 2018(2019) 幸福なラザロ
-
第71回 カンヌ国際映画祭 脚本賞
第90 回 ナショナル・ボード・オブ・レビュー(米国映画批評会議賞)
外国語映画トップ5
第54回 シカゴ国際映画祭 最優秀作品賞(ゴールド・ヒューゴ賞)
NYタイムズ紙 2018年ベストテン 5位
- 2020 Omelia contadina(短編映画/写真家JRとの共同監督作)
- 第77回 ヴェネチア国際映画祭 アウト・オブ・コンペティション部門 正式出品
- 2020(2022) 4つの道(短編映画)
- 2021 Futura
(ドキュメンタリー/フランチェスコ・ムンズィ、ピエトロ・マルチェッロ共同監督作) - 第74回 カンヌ国際映画祭 監督週間部門 正式出品
- 2022 無垢の瞳(短編映画)
-
第95 回アカデミー賞® 短編映画賞 ノミネート
第75回カンヌ国際映画祭 プレミア上映作品
- 2023(2024) 墓泥棒と失われた女神
-
第95回 ナショナル・ボード・オブ・レビュー(米国映画批評会議賞)外国語映画トップ5
第76回 カンヌ国際映画祭 コンペティション部門 正式出品
第68回 バリャドリッド国際映画祭 シルバー・スパイク賞
第59回 シカゴ国際映画祭 最優秀撮影賞 最優秀アンサンブル・キャスト・パフォーマンス賞
第47回 サンパウロ国際映画祭 観客賞
第36回 ヨーロッパ映画賞 プロダクション・デザイナー賞
撮影:エレーヌ・ルヴァール
Hélène Louvart
1964年、フランス出身。ルイ・リュミエール国立学校を卒業後、数本の短編の撮影を経て『クリスマスに雪はふるの?』(97/サンドリーヌ・ヴェイセ監督)で長編劇映画の撮影監督デビュー。これまでに世界中で100を超える作品に携わり、2012年にはThe Women’s International Film & Television Showcaseで撮影監督賞を受賞している。撮影を務めた主な作品は、ジャック・ドワイヨン監督作『ラジャ』(03)、『誰でもかまわない』(08)や、『ジョルジュ・バタイユ ママン』(06/クリストフ・オノレ監督)、『アニエスの浜辺』(09/アニエス・ヴァルダ監督)、3Dで撮影したドキュメンタリー『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(12/ヴィム・ヴェンダース監督)、エリザ・ヒットマン監督作『ブルックリンの片隅で』(17)、『17歳の瞳に映る世界』(21)など。アリーチェ・ロルヴァケル監督とは、『天空のからだ』、『夏をゆく人々』、『幸福なラザロ』、『無垢の瞳』などに続くタッグとなる。
編集:ネリー・ケティエ
Nelly Quettier
1957年、フランス出身。パリ第8大学映画学部を卒業後、編集アシスタントとなる。編集を務めた主な作品は、レオス・カラックス監督作『汚れた血』(88)、『ポンヌフの恋人』(92)、『ポーラX』(99)、『TOKYO!/メルド』(08)、『ホーリー・モーターズ』(13)、第47回セザール賞最優秀編集賞などを受賞した『アネット』(22)や、クレール・ドゥニ監督作『パリ、18区、夜。』(97)、『ガーゴイル』(02)、今年4Kレストア版で日本初公開される『美しき仕事』など。アリーチェ・ロルヴァケル監督とは、『幸福なラザロ』(19)に続くタッグとなる。
ジョシュ・オコナー (アーサー)
Josh O' Connor
1990年5月20日、イギリス・チェルトナム出身。ブリストル・オールド・ヴィック演劇学校卒業後、映画やTVドラマに出演し始める。『ライオット・クラブ』(16/ロネ・シェルフィグ監督)で長編映画デビューを果たした。2人の孤独な青年の愛を描いた『ゴッズ・オウン・カントリー』(19/フランシス・リー監督)で主演を務め、第20回英国インディペンデント映画賞主演男優賞を受賞、第71回英国アカデミー賞では有望な新人に授与されるブレイクスルー・ブリッツに選出、第23回英国エンパイア賞最優秀男性新人賞を受賞するなど、一躍イギリスを代表する若手俳優としての地位を確立。大ヒットTVシリーズ「ザ・クラウン」(19-20)ではチャールズ皇太子役を演じ、第78回ゴールデン・グローブ賞テレビ部門と第73回プライムタイム・エミー賞の主演男優賞を受賞。ほか主な出演映画は、『幸せの答え合わせ』(21/ウィリアム・ニコルソン監督)、『帰らない日曜日』(22/エヴァ・ユッソン監督)、ゼンデイヤ演じる主人公と三角関係となる役柄を演じた『チャレンジャーズ』(24/ルカ・グァダニーノ監督)など。今後は、ケイト・ウィンスレット、マリオン・コティヤール共演の「Lee」(23/エレン・クラス監督)の公開やクリステン・スチュワート、エル・ファニングら共演予定の「Rosebushpruning」(カリム・アイノズ監督)の撮影を控えている。ほかブルガリやロエベなどハイブランドでのモデルを務めたり、写真家としても活動するなどマルチな才能を発揮している。
イザベラ・ロッセリーニ (フローラ)
Isabella Rossellini
1952年6月18日、イタリア・ローマ出身。父はイタリア映画界の巨匠ロベルト・ロッセリーニ監督で、母は往年の名俳優イングリッド・バーグマン。1976年、『ザ・スター』(ヴィンセント・ミネリ監督)で映画デビューを果たす。その後、『ホワイトナイツ/白夜』(86/テイラー・ハックフォード監督)でキャリアを歩みはじめ、『ブルーベルベット』(87/デヴィッド・リンチ監督)で映画女優としての地位を確立する。ほか主な出演映画は、『永遠に美しく…』(92/ロバート・ゼメキス監督)、『不滅の恋/ベートーヴェン』(95/バーナード・ローズ監督)、『複製された男』(14/ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)など。長きにわたり世界的なコスメブランド・ランコムのアンバサダーとしても活躍し、モデルとしても世界中の女性に影響を与えた。また、動物行動学と保全学の修士号を取得するほど動物や野生動物の保護に強い関心を持っており、動物の性生活をテーマにした教育ドキュメンタリー「イザベラ・ロッセリーニのグリーン・ポルノ」(15)を制作するなど、多岐に渡って活躍している。
アルバ・ロルヴァケル (スパルタコ)
Aiba Rohrwacher
1979年2月27日、イタリア・フィレンツェ出身。アリーチェ・ロルヴァケル監督の姉。イタリア国立映画実験センターで演技を学び、2009年、第59回ベルリン国際映画祭シューティング・スター賞に選ばれ、注目を集める。アダム・ドライバーと共演した『ハングリー・ハーツ』(16/サベリオ・コスタンツォ監督)では第71回ヴェネチア国際映画祭最優秀女優賞を受賞。アリーチェ・ロルヴァケル監督作品では『夏をゆく人々』、『幸福なラザロ』、『無垢の瞳』などに出演している。ほか主な出演映画は、『ミラノ、愛に生きる』(11/ルカ・グァダニーノ監督)、『眠れる美女』(13/マルコ・ベロッキオ監督)、『おとなの事情』(17/パオロ・ジェノヴェーゼ監督)、『靴ひものロンド』(22/ダニエーレ・ルケッティ監督)、『3つの鍵』(22/ナンニ・モレッティ監督)など。イタリア映画界を代表する俳優のひとりである。
カロル・ドゥアルテ (イタリア)
Carol Duarte
1991年7月10日、ブラジル・サンパウロ出身。サンパウロ大学演劇学部で演技を学ぶ。舞台を中心に活動を始め、2017年、「A Força do Querer」で自分がトランスジェンダーであることを知った少年役でテレビドラマデビューし、新人女優賞を多数受賞した。第72回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門最優秀作品賞を受賞した『見えざる人生』(19/カリム・アイノズ監督)で映画デビュー。ほか主な出演映画は、「Malu」(24/ペドロ・フレイレ監督)など。舞台、映画、ドラマと多岐に渡って活躍している。
ヴィンチェンツォ・ネモラート (ピッロ)
Vincenzo Nemolato
1989年9月10日、イタリア・ナポリ出身。「La kryptonite nella borsa」(11/イヴァン・コトロネオ監督)で映画デビュー。ほか主な出演映画は、『五日物語-3つの王国と3人の女-』(16/マッテオ・ガローネ監督)、『ヒットマン:レジェンド 憎しみの銃弾』(19/イゴール・ツヴェリ監督)、『マーティン・エデン』(20/ピエトロ・マルチェッロ監督)など。舞台、映画、ドラマと多岐に渡って活躍している。
- 【イタリアのトンバローリ(墓荒らし)】
- 「ローマの地下は掘れば遺跡」と言われるように、ヨーロッパにおける古代文明の中心地であったイタリアでは今もなお遺跡の発掘調査が続き、貴重な文化財が次々と発見されている。遺跡を許可なく発掘し、出土品を独自のルートで金銭に換える者たちをイタリアではトンバローリ(墓荒らし)と呼ぶ。かつては遺跡の監視の目も甘く盗掘や違法売買が横行していたが、現在では自国の美術品の保護を強化し、盗掘物の発見件数は激減している。なかには逮捕されたトンバローリが遺跡の所在を証言したことにより、考古学的に貴重な発見に繋がった事例もあるという。
- 【ギリシャ神話「オルフェウスとエウリュディケ」】
- オルフェウスはギリシャ神話に登場する吟遊詩人で竪琴の名手。毒蛇に噛まれて亡くなった妻エウリュディケ(木の精霊)を連れ戻そうと冥界に下ったが、「地上に着くまでは決して彼女を見てはならない」という冥界の王との約束に反して地上に戻る途中で後ろを振り返ってしまったため、望みを果たせなかった。彼の死後 、竪琴は天に昇って星座となった。このギリシャ神話の悲劇をテーマとして、絵画、彫刻、詩、小説、演劇、音楽、オペラなどで様々な作品が作られた。
- 【エトルリア】
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紀元前8世紀から同3世紀頃にかけて現在のトスカーナ州にあたる地域を核にイタリア中央部で繁栄した高度な文明で、12の都市による宗教的な同盟からなる都市国家群。紀元前3世紀頃、ローマ人の侵略によって同化され、消滅した。エトルリア人の貴族が残した墳墓の多くは、熟練の技術によって地下に造られた大規模な空間で、住宅の間取りを再現した配置や様々な生活用品を模った装飾がみられる。エトルリア人にとって来世は地下にあり、そこでは現世と同様の生活が続くと考えられていたとされるのが定説。
本作はエトルリア文明があった地域周辺で撮影が行われた。