海外レビュー

観れば無傷では帰れない、その記憶が焼きついて離れないこの映画は、
私たちの心の中に恐怖とメランコリーを引き起こす。
それは、観客が自己喪失寸前の登場人物たちに一体化し、
いつか自分も、彼らのようになるかもしれないという無限の苦しみでもある。

この映画から滲み出るのは、最も日常的な事からつぐないたいという欲求、
倫理そして他者への敬意に至るまでを扱う、その繊細さである。
巧みにもヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督は、信じがたい力と知性で、
その全てを物語る。

ハッとする素晴らしさ。まさに傑作!!

魅惑的で、陶然たる美しさに心が奪われる。
普遍的な人間のもろさを描きながら、観客に豊かさをもたらす作品。

知らぬ間にあなたの世界観を変えてしまう映画などそうあるものではない。
この映画はそれだ。

愛さずにはいられない、様々なシーンが絶えず心に浮かんでくる。

夫婦の美しく、痛みを伴う会話のひとつひとつに夢中にさせられる。

優れた映画作家がみなそうであるように、
ヌリ・ビルゲ・ジェイランは映画に魂があることを示してくれる。
私たちは映画に導かれ、その神秘の奥底へ到達するのだ。

壮大なフレスコ画のような作品でありながら、観る者の感情を高まらせ、
驚くべき演出力によってあまりにも人の心をえぐる。
その感動を人と分かち合うことが惜しまれるほどに。

絶頂期のイングマール・ベルイマンのようだ。
豊かな力と美しさを併せもつ深い物語へと私たちを誘う、卓越した傑作。

チェーホフとシェイクスピアの間―感情が風景になり、風景が感情となる。
感情の凍り付き、そして魂の雪解け。人間という存在の真実が絶えず震えている。
言葉は壊すと同時に救い、映像は映している以上のものを映し出す。

ヌリ・ビルゲ・ジェイランは、哲学者である。
あらゆるものを蝕む様々な矛盾と、人間としての条件を残酷かつ静謐に捉える。
それでも、この映画は光に満ちている。

美しく長い物語は、徐々に抽象性を失い、骨の髄にこたえるものになってゆく。

これはロマンにあふれた心の中の旅だ。
壁を破る押し殺した言葉、風景を満たす怒りを込めた身振りに、
眠っていた冬の風景が目覚めていく。

野心的な企てと確かな手法、心つかむカッパドキアの風景、視線の正確さ。
3時間の冬の物語に身を浸すにはそれが十分な理由だ。

人の心を魅了し、虜にし、突き動かす映画。
人は人生に微笑むために、晴れた日を待たねばならないのだ。