映画『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』|ダニス・タノヴィッチ監督(『ノー・マンズ・ランド』『鉄くず拾いの物語』)幻の問題作、世界初公開! 子どもたちを守るため、男は世界最大企業を敵にまわした。
3/4(土)~
監督 ダニス・タノヴィッチ
脚本 ダニス・タノヴィッチ、アンディ・パターソン
撮影 エロル・ズブツェヴィッチ
編集 プレールナー・サイガル
音楽 プリータム
出演 イムラン・ハシュミ、ギータンジャリ、ダニー・ヒューストン、カーリド・アブダッラー、アディル・フセイン
配給 ビターズ・エンド
2014年/インド=フランス=イギリス/原題:Tigers /94分/シネマスコープ
「第62回 サン・セバスチャン国際映画祭 Solidarity賞/第39回トロント国際映画祭 正式出品」1997年、パキスタンで大手グローバル企業が起こした粉ミルクによる乳幼児死亡事件。これは、隠された真実の物語―

巨大グローバル企業が販売する「世界最高の粉ミルク」その裏側で奪われる小さき命たち──

1997年。ある大手グローバル企業が、パキスタンで粉ミルクを強引に販売したことによって、不衛生な水で溶かした粉ミルクを飲んだ乳幼児が死亡する事件が発生した。セールスマンのアヤンは、自らが販売した商品が子どもたちの命を奪っている事に気づき、世界最大企業を訴えようとする。アヤンの前に立ちはだかる、途方もなく巨大な権力の壁。しかし、男は人生の全てを投げうって立ち向かう。子どもたちを守るため、そして愛する家族のために─。これはパキスタンで実際に起こった事件を基に描かれる、隠された真実の物語。映画は善良なセールスマンの無謀とも言える奮闘を、真正面から力強く描きあげた。男の勇気ある行動は、信念を貫くということ、何物にも代え難い命の尊さを教えてくれる。世界で議論を巻き起こした幻の問題作が、ついに満を持して世界初公開となる。

名匠 ダニス・タノヴィッチ監督×『めぐり逢わせのお弁当』製作チームがタッグを組んだ奇跡の映画!

メガホンを執ったのは、アカデミー賞®外国語映画賞など数々の賞を受賞した『ノー・マンズ・ランド』で衝撃のデビューを飾り、『鉄くず拾いの物語』でベルリン国際映画祭三冠に輝いた、名匠ダニス・タノヴィッチ監督。常に社会問題をテーマにしながら、そこにユーモアやエンタテイメント性を加えて人びとの心を魅了する監督は、この悲しい事件にショックを受け、世界にこの問題を訴えたいと立ち上がった。さらに、世界中で大ヒットを記録した『めぐり逢わせのお弁当』製作チームとタッグを組み、いくつもの困難を乗り越えて見事映画を完成させた。実話を基にしながらも、映画は主人公アヤンの孤高な奮闘劇をドラマチックに活写し、いわゆる告発映画というジャンルを超え我々の心を鷲掴みにする。

いま最も注目されるボリウッド映画界のスター俳優 イムラン・ハシュミをはじめとした役者陣の熱演、胸に迫るエモーショナルな旋律。

本作はパキスタンで実際に起きた事件だが、撮影はインドを拠点に敢行された。主人公のセールスマン アヤンを迫真の演技で魅せるのは、いま最も人気のあるボリウッド映画スター イムラン・ハシュミ。また、共演は日本で大ヒットを記録した『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』や『マダム・イン・ニューヨーク』で存在感のある役どころを演じるアディル・フセイン。さらに『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』、『ビッグ・アイズ』のダニー・ヒューストン、『われらが背きし者』のカーリド・アブダッラーなど各国から集まった実力派俳優たちの熱演が光る。また、インドを代表する音楽家の一人 プリータムによる異国情緒溢れるエモーショナルな旋律が、映画に大きなうねりを与えている。

Story

パキスタンで国産製薬会社に勤めるアヤンは、ある日、妻の勧めで多国籍企業の営業募集を知り、大手グローバル企業に就職する。「諸君が売り込むのは世界最高の粉ミルクだ!」赤ん坊の粉ミルクを手に、病院を行き来する毎日。アヤンはついに、大手グローバル企業のトップセールスマンになる。

しかしある日、悪夢のような現実を聞かされる。パキスタンで粉ミルクを強引に販売したことによって、不衛生な水で溶かした粉ミルクを飲んだ乳幼児が死亡する事件が起きたのだ。その事実を知っていながら、責任放棄をする企業。自らが販売した商品が子どもたちの命を奪っている事に心を痛めたアヤンは、たった一人で世界最大企業を訴えようとする。しかし、次々とアヤンの前に立ちはだかる、途方もなく巨大な権力の壁。ついには愛する家族と離れながら、男は人生の全てを投げうって立ち向かう。子どもたちを守るため、そして愛する家族のために——。

Cast

アヤン役/イムラン・ハシュミ

Emraan Hashmi

1979年3月24日インド・ムンバイ生まれ。
03年に「Footpath」で映画デビュー。以後ロマンティック・スリラー「Murder」(04)、「Aashiq Banaya Aapne」(05)、「Gangster」(06)、「The DirtyPicture」(11)、「Ghanchakkar」(13)、「Raja Natwalal」(14)をはじめとした30作以上のヒット作に出演。力強い演技で称賛を集め、「Murder 2」(11)でスターダスト賞最優秀男優賞と、アプサラフィルム&テレビジョン賞最優秀男優賞を受賞。インドの映画雑誌「フィルムフェア」が主催するフィルムフェア賞では出演作の「Gangster」(06)、「Once Upon a Time in Mumbaai」(10)、「Shanghai」(12)の3度で受賞をはたす。インド、パキスタン両国に多数のファンを持ち、ファンの間では愛情を込めて「ヒットマン・ハシュミ」と呼ばれているほど、いまボリウッド映画界で最も人気で高額なスター俳優の一人となっている。本作が、非ボリウッド初出演作となる。

——アヤンという人物について

私が演じるアヤンは、パキスタンで奮闘する若きセールスマンです。彼の家族と、結婚したばかりの可愛い妻にとって喜ばしいことに、アヤンは粉ミルクを販売する有名な多国籍企業に就職します。彼は持てる技能の全てを使い(実際彼は有能なのです)、医者や医療関係者に自分たちの製品が市場の中で最良だと説得します。すぐ彼はトップ・セールスマンとなり、彼の生活は順風満帆です。しかしアヤンは医者から、自分が売っているミルクを飲んで赤ん坊が死んでいることを聞き、打ちのめされ、心の葛藤を経験します。その時、彼は何かしなければ、と決意するのです。

——この企画のどこに惹きつけられましたか

何よりもダニス・タノヴィッチという監督です。彼の作品歴を見るだけで充分で、彼が作ってきた素晴らしい作品について私が語る必要はありません。そしてこの映画で、これまでとは全く違った観客に出会えると分かっていました。キャラクターが私に呼びかけてきて、これを演じられるのは自分しかいないと感じられたのです。私には4歳半になる息子がいます。脚本に描かれている出来事が実際の事件だと初めて聞かされたときはショックでした。子どもたちは最初の数年は完全に親の手に委ねられており、選択をするのは親なのです。もしこんな命にかかわる製品が世に出回っているとしたら、親たちにはどうしようもありません。人びとは、この問題がまだ続いていることを知る必要がありますし、大企業を脅かすだけの声をあげるべきなのです。即座に解決できるとは思いませんが、この映画はその一歩になりうると信じています。

ザイナブ役/ギータンジャリ

Geetanjali

インド・シッキム生まれ。モデルとしてキャリアをスタートさせ、12年に女優デビュー作「I.D.」で第19回ロサンゼルス映画祭最優秀俳優賞とマドリッドイマジンインディア賞最優秀女優賞を受賞。その他「Monsoon Shootout」(13)、「That DayAfter Every Day」(13)に出演。本作が映画出演4作目となる。

アレックス役/ダニー・ヒューストン

Danny Huston

1962年5月14日イタリア・ローマ生まれ。映画監督として『ミスター・ノース/風をはこんだ男』(98)、『コレット・水瓶座の女』(91)、『冷たい夜は死の匂い』(95)を手掛ける。俳優としては75年『狼たちの影で』俳優デビュー。『マリー・アントワネット』(06)、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(09)、『ビッグ・アイズ』(14)など映画やTVドラマなど数多くの作品に出演している。伝説的なイスラエルのバスケット選手の人生を描いた「Playoff」(11)ではモントリオール国際映画祭最優秀男優賞を受賞。50年代のマイアミビーチを舞台に欲望にかられたセレブたちの金と権力の闘争を描くTVドラマシリーズ「マジックシティ黒い楽園」(12-13)ではゴールデングローブ賞最優秀助演男優賞にノミネートされた。

ナディーム役/カーリド・アブダッラー

Khalid Abdalla

1980年12月30日イギリス・グラスゴー生まれ。エジプト人の両親の間に生まれ、ロンドンで育つ。03年に劇作家クリストファー・マーロウの「Tamburlaine the Great」で舞台俳優として活動を始める。その後、TVドラマ「Spooks」(05)などに出演し、ポール・グリーングラス監督の『ユナイテッド93』(06)でスクリーンデビュー。その他日本でも公開された『君のためなら千回でも』(07)や『われらが背きし者』(16)などに出演。

ビラル役/アディル・フセイン

Adil Hussain

1963年10月5日インド・アッサム生まれ。99年にインドで上演された「Othello: APlay in Black and White」に出演し、高く評価を受ける。「Iti Srikanta」(04)、「Kaminey」(09)、「Gangor」(10)など数多くの作品に出演し、インド国内にとどまらず、アメリカ、イギリス、イタリア、フランスの映画にも登場。日本でも大ヒットを記録した『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(12)や、『エージェント・ヴィノッド 最強のスパイ』(12)、『マダム・イン・ニューヨーク』(12)でも存在感のある役どころを演じている。

Staff

共同脚本:アンディ・パターソン

Andy Paterson

プロデューサーとして「Privileged」(82)をはじめ、『星の王子さまを探して』(95)、『恋の闇 愛の光』(95)など映画、TVドラマを数多く手がける。スカーレット・ヨハンソン主演で、17世紀に活躍した寡作の天才画家フェルメールが描いた一枚の絵を巡る物語『真珠の耳飾りの少女』(03)にも参加。コリン・ファースやニコール・キッドマンの出演に加え真田広之の出演でも話題を呼んだ『レイルウェイ 運命の旅路』(13)でフランク・コットレル・ボイスと脚本を担当、本作が脚本家としての2本目の作品となる。

音楽:プリータム

Pritam

05年から現在にかけて100作品以上の音楽を手がける、インドを代表する音楽家の一人。インドの映画雑誌「フィルムフェア」が主催するフィルムフェア賞音楽賞にも05年から13回ノミネートされ、なかでも耳の聴こえない青年バルフィと2人の美女との恋の行方を描いたハートウォーミングストーリー『バルフィ! 人生に唄えば』(11)では最優秀音楽賞と最優秀伴奏賞を受賞すると共に、アジア・フィルム・アワードとアジア太平洋賞でも最優秀音楽賞を受賞している。その他の代表作は『エージェント・ヴィノッド 最強のスパイ』(12)、『フェラーリの運ぶ夢』(12)、『チェイス!』(13)など。

編集:プレールナー・サイガル

Prerna Saigal

07年、「Frozen」で助監督を務めたほか、「A Distant Mirage」(08)、「IWitness」(11)、「Peddlers」(12)、「Bombay Velvet」(15)などの編集を担当。ダニス・タノヴィッチ監督作は本作が初参加。

撮影:エロル・ズブツェヴィッチ

Erol Zubčević

撮影監督として多数の作品に参加。ダニス・タノヴィッチ監督作は「Prtljag」(11)、『鉄くず拾いの物語』(13)に続き3作目。『サラエヴォの銃声』(17)も担当している。