監督インタビュー

Q.舞台版「シャッフル]を手掛けられたきっかけは?

劇団スパイスガーデンという若い5人組の劇団があるのですが、僕はその旗揚げオーディションから全作品の作と演出を担当しています。「シャッフル」は、その劇団の第三回公演として上演したものです。
これまでのスパイスガーデンの作品は、役者の技術というよりも勢いで感情を表現し、それで客席を巻き込んで行く、というものが多かったんです。それは旗揚げ当初は劇団員全員が素人だったということにも起因しているのですが、昨年の第3回公演を企画するにあたって、そろそろ次のステップに進もうということをプロデューサーと話しました。物語性を全面に押し出し、役者の繊細なコミュニケーションによって物語が進行して行く、所謂普段僕が映像で紡いでいるようなジャンルです。
そこで生まれたのが「シャッフル」です。元々だまし合いやサスペンスが個人的に大好きなので、第三回公演はこれで行こうと考えました。

Q.舞台から映画化しようと思われたのは?

舞台を上演してかなりの好評価を頂き、その流れで映画化しないかという話になりました。非常に有り難い話ではあったんですが、舞台という完成形がある以上、全く同じことをやっても意味がないかなと。ですから、別ものというか映画独自の作品になるのであれば、是非やらせてほしいということで決まりました。
また、前々から金子くん主演の映画の企画をプロデューサーと検討していたので、「これだ」と。ハードボイルドを地で行くレイモンドが、強烈な色気を持った金子くんにぴったりはまるのではないかと考えました。

Q.映画用『シャッフル』の台本を作るにあたって、
一番苦労した点、意識した点は?

舞台版という、正解と言うか受け入れられたものがあるから難しいんですよね。同じことをやっても舞台を否定することになってしまうし、どう差別化していくかという点に頭を悩ませました。映画化するからにはやはり、細かいエピソードを語るという意味で世界観を広げ、映像独自の表現方法をとるべきだし、舞台版「シャッフル」を好きで何度も足を運んでくれた方々を納得させる作品にどう作っていくか、というところが最も意識した部分です。
演出的な話にも関わりますが、映像では同じキャラクターが違う衣装で現れた場合、例えば過去なのか、数日後なのかと見方が限定されてしまうわけです。まさか、別の次元や別の星の話だとはよっぽどのことがない限り思わない訳で。しかし、舞台となると見方の幅が際限なく広がります。同じ役者が何役も演じて、現在軸の次が別世界のエピソード、なんて物語もざらにあります。ですから舞台を見ている観客は、適度に混乱しつつも、これがどう繋がって行くんだろうと広い振り幅で物語を掴もうとします。なので、色々な伏線を明確に提示しても、見ている側はすんなりと最後まで見続けることができるんです。逆に映像は、同じ役者が何役も演じるということがあまりない。そして見方も限定されてしまう。ですから、あまりにも大きな伏線をドカンと提示してしまうと、完全にネタばれとして明確になりすぎてしまうため、そのさじ加減というかバランスが大変でした。
舞台の構造をそのままなぞっている部分も多々ありますが、絵変わりという点において、やはり同じシチュエーションが続くと見ている側は疲れてしまいます。ですから可能な限り、外部の要因などをポイントで入れるようにしました。しかしメインは密室での心理劇ですから。その緊張感をくずさない部分に外部のエピソードを入れる、という部分が苦労しました。

Q.ハードボイルドに対してこだわりがあるように思いましたが?

思い入れがあるというか、単純に好きな世界ですね。今自分のいる映像の現場もそうですが、元々体育会系で応援団をやっていたりとか男の世界で生きてきたので、そういうノリが非常に好きです。まぁ、体育会系とハードボイルドは少し意味が違って来るかもしれませんが、「男の生き様」という根底の部分では共通していると思います。
普段からハードボイルド小説は好きで読んでいるので、そこから役名なども参考にさせてもらいました。あまりマニアックにならない程度に。

Q.密室劇・会話劇の作品ですが、
映画化にあたって演出での狙ったところは?

今回長回しが多かったのですが、役者同士の感情なり、思惑なり、だまし合いの部分が全面に押し出される映画だと思うので必要なのですが、単純に長回しばかりだと舞台をそのまま撮って上映すればいい、となってしまうので、長回しの部分と映像演出で見せていく部分のバランスには気を付けました。 閉鎖された空間のなかでそれぞれが追い詰められていったり、疑いはじめていったり、楽しんでいったり、そういった流れをキャラクターとしてだけでなく、役者自身にも与えていきたいと言う部分があったので、長回しはうまく作用したんじゃないかなと思います。

Q.それぞれ役者について

―金子ノブアキさんについて―

事前にいろいろ作品は見ていたのですが、雰囲気というか色気とオ―ラがある役者だと思っていました。 今回金子君が演じるレイモンドと戸辺は、かっこいい部分だけでなく、弱い部分や振り回されてしまう一面も必要だったので、こういった三の線というか遊んだ演技もはまるんだということを発見出来て、とても面白かったですね。

―賀来賢人さんについて―

エラリーの年齢設定より賀来君は年下で、5人の中でも最年少でしたから、一人だけ若く見えないようにしたいと本人も気にしていました。でも居ずまいを含め、とてもクールに演じていたと思います。一番セリフ覚えがよかったですし、かなり勉強熱心でした。最後の金子くんとの対決シーンは長回しなんですが、あの分量のセリフを泣きながらテンションも保ってほぼ一発OKで演じてくれて、すばらしいなと思いました。

―鎌苅健太さんについて―

印象としては、今まで「かっこいい」というイメージの役者さんだったのですが、今回のエドといういい加減な役をうまく演じていて、ふり幅があるなと思いました。 この映画は、アガサがひっかきまわして物語を進めている構造になっていますが、実は密室のなかでテンポを作っているのはエドだったので、そういう芝居のリードのさせ方が非常にうまかったですね。

―ムロツヨシさんについて―

今まで映像作品でも、舞台でも何度も見させてもらっていました。まさにムロさんの狙ってないけど狙っている感じの得意分野というか、そういった部分が大藪というキャラクターでも出ていたと思います。亀治郎さんと同じ最年長でしたし、現場でのムードメーカーでしたね。カメラが回っていない所でもいろんなことをやってくれて、キャスト、スタッフを盛り上げてくれました。

―市川亀治郎さんについて―

主に舞台上でよく見ていました。アガサという役は一人だけ我が道を進み、勢いのある芝居や雰囲気で全てを持っていくというキャラです。まさにカメさんはそのキャラ通り、空気をかきまわして、つきぬけた演技をしてくれました。その存在感が凄い。適役だったと思います。

Q.5人の撮影で一番気を使った点、
世代が近い俳優たちと一緒に仕事をした点について。

気を使った点で言えば、順撮りですよね。なぜなら一日で撮らなくてはならない分量・シーンが多いし、内容的にも複雑でキャラクターの入れ子状の思惑も難しい。となると、これは順番にやっていかないと混乱してとんでもない事態になると思い、最初から強行させて貰いました。でもこれによって役者もみんないい距離感、関係性ができたと思いますね。
物語の構造上も、最初はみんな戸辺に記憶を取り戻させるための芝居をしていて、そこからMr.ヤマシタという異物が入って来て、最後までひっかきまわされて突き進むという流れだったので、順撮りにした事によって、密室の中でどんどん起こっていく物語にキャラクターとしてだけでなく、役者としても乗っていけたのではないかと。いい効果が出せたように思います。
またこれまでの仕事は、年上の方やものすごく年下という役者さんが多かったのですが、今年33歳の僕ですが、メインの役者さんたちがほぼ同世代というのが初めてだったので、通じるものも多く、やりやすかったですね。部活であるとか、まさに体育系のノリです。複雑な内容なので、撮影の合間に台本に関する話し合いをいつも以上に持ったりして、非常に一帯感がありました。

Q.最後にメッセージを。

最初の部分から色々なヒント・伏線が隠されているので、見逃すことなく細部まで見てもらえたらと思います。見終わった後にもああだこうだとみんなで話し合いができ、まさに映画の醍醐味を味わえる作品だと思いますので、上映後の友達との会話も含めて楽しんでもらいたいです。