イントロダクション
愛を見つめ続けてきた、ヌーヴェルヴァーグの“恐るべき子供”
フィリップ・ガレル監督が辿り着いた新境地
16歳で制作した短編をきっかけに、ヌーヴェルヴァーグの次世代の旗手として注目を集め、60年代から現在まで活躍を続ける名匠フィリップ・ガレル監督。第68回カンヌ国際映画祭監督週間に出品され、絶賛された最新作『パリ、恋人たちの影』は、愛を見つめ続けてきた監督が辿り着いた新境地。
69年のNY。フィリップ・ガレルは、アンディ・ウォーホルのスタジオ・ファクトリーに出入りし、デヴィッド・ボウイなど数々のアーティストに影響を与えたヴェルヴェット・アンダーグラウンドの歌姫・ニコと運命的に出会う。ふたりで過ごした私的な記憶は、美しくも痛みと哀愁に満ちた数々の作品に結実し、これまでヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞に輝いた『ギターはもう聞こえない』『恋人たちの失われた革命』、ジーン・セバーグ主演『孤高』、カトリーヌ・ドヌーヴ主演『夜風の匂い』など、自身の人生と時代の空気感を反射した傑作となった。最新作では、これまでのどの作品にもないような愛の痛みだけでない、愛することの喜びをモノクロームの画面の中に軽やかに浮かび上がらせる。
傷つきながらも宝石のように輝く恋人たちの影
新たなる珠玉の愛の物語が誕生!
夫・ピエールの才能を信じ、自分の夢を捨て二人三脚でドキュメンタリー映画を制作する
献身的な妻マノン。映画制作に行き詰まりを感じていたピエールは、ある日、若い研修生のエリザベットと偶然出会い、恋に落ちる。妻がいると知りつつもピエールと関係を続けるエリザベットは、たまたま立ち寄ったカフェで予期せずマノンが浮気相手と密会している
ところを目撃。ピエールに告げるが――。思い描いていた未来とは少し違う現在に、
満たされない想いと孤独を抱える男と女たち。愛されたいと彷徨う3人が行きつく先とは・・・。
愛に光を当て続けてきた監督がとらえた、傷つきながらも宝石のように輝く恋人たちの影。観る者の心をつかんで離さない珠玉の愛の物語が誕生した。
『昼顔』『満月の夜』『勝手に逃げろ/人生』…
映画界を牽引してきた錚々たるスタッフが集結!
本作の共同脚本として、ジャン=リュック・ゴダール、ルイス・ブニュエルらとタッグを組んできた
ジャン=クロード・カリエール、撮影監督をエリック・ロメール、ルイ・マル、ダニエル・シュミットらの世界を
映し出してきたレナート・ベルタが務めるなど、映画界を牽引してきた錚々たるスタッフが集結!
音楽は、前作『ジェラシー』に続きジャン=ルイ・オベールが担当。ゴダールに「ガレルは息をするように映画を撮る」と言わしめ、
レオス・カラックスら巨匠たちも心酔してきたフィリップ・ガレルの世界を圧倒的な感性と技術力でより高みへと引き上げる。
ストーリー
愛は、影のように身勝手。
追いかければ逃げてゆき、逃げるものを追いかける――
アパートの一室。雑然とした部屋の奥、洗面所で長い髪を乾かすマノン。何度も鳴るチャイムには気づかない。ふと振り返ると、管理人が立っている。「2日以内に家賃を払わないなら出て行ってくれ」今にも泣きだしそうな気持ちを堪えるマノン。
ピエールは、ドキュメンタリー映画を制作している。マノンは、そんな夫を監督として世間に認めさせたいと自らの夢を諦め、パートをしながら映画制作も献身的に手伝っている。同じ目標を持つことが愛だと信じているのだ。
「難しい作品になりそうだ」ピエールの表情は暗い。映画制作はなかなか軌道に乗らず、2人の気持ちは少しずつすれ違っていく――。
ある日、保存係の研修生エリザベットが重いフィルム缶を抱えて倉庫から出てくる。その様子を見ていたピエールは手伝うことにした。暖かな日差しのなか並んで歩く2人。「まだ残りが…」ふいに見つめ合う。偶然出会った二人の距離は、あっという間に縮まった。
妻がいると知りながらピエールと関係を続けるエリザベットだったが、彼の私生活が気になってたまらず、こっそり2人が住むアパートを探しに来た。笑顔で会話をするピエールとマノンの姿を見つけてしまい、悲しげにその場を去る。
ピエールは、2人と関係を続けることが身勝手だと感じながらも、献身的に尽くすマノンとも、若いエリザベットとも別れる気はなかった。
ある日、エリザベットは偶然立ち寄ったカフェで、マノンと浮気相手の男が密会しているのを目撃する。それは1度だけではなかった…そして、真実をピエールに告げるが――。
想像していた未来とは少し違った現在。求めれば求めるほど、手のひらからこぼれ落ちていく理想の自分。
愛を求めて彷徨う3人が行きつく先とは…
レビュー
これは、フィリップ・ガレル監督の最高傑作だ!
観る者の情感を揺さぶり、まっすぐに訴えかけてくる。
――カイエ・デュ・シネマ
モノクロームの映像、文学的なナレーション、
鋭い脚本で描かれる男と女の情熱と傷心――。
ロメールやトリュフォーの匂いが漂う。
――スクリーン・デイリー
これは欲望の影だ。結ばれることと孤独、歓び
と痛み…フィリップ・ガレルは水晶のような
透明度で、本質だけを描く。
――テレラマ
監督の私的な記憶から輝いたものが生まれ、
ありふれた男女の人生が、宝石のようになる。
――ル・モンド
監督プロフィール
監督:フィリップ・ガレル
1948年4月6日生まれ、フランス・パリ出身。
19歳の時に「Marie pour memoire(記憶すべきマリー)」がイエール映画祭で大俳優ミシェル・シモンに称賛されヤングシネマ賞を受賞。69年、アンディ・ウォーホルのユニット、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの歌姫であったニコと出会い、彼女を主演に7本の作品を製作。『孤高』(74)ではニコと共にジーン・セバーグを迎え、彼女たちの切ないまでに美しいポートレートを映し出した。『秘密の子供』(79)で“説話的な時代”へと移行し、父モーリスを主演に迎えた『自由、夜』(84)が、カンヌ国際映画祭の「フランス映画の展望」部門にて展望賞を受賞。88年にニコの突然の死を知ったガレルは、彼女との生活、そして別離、死をテーマに『ギターはもう聞こえない』(91)を発表。ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞する。『愛の誕生』(93)、「彷徨う心」(96)でも、ニコの死後を生きるガレル自身の人生が語られ続ける。その後、『夜風の匂い』(99)で本人からのラブコールを受けフランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴを起用して、自らの過去とより距離を置いた物語を綴り始め、『白と黒の恋人たち』(01)で初めて若者たちを主人公にし、ヴェネツィア国際映画祭にて国際批評家連盟賞を獲得。息子ルイ・ガレルを初めて主役に据えた『恋人たちの失われた革命』(05)では五月革命時のパリを生きる若者たちを描きヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞を受賞。以降、『愛の残像』(08)、『ジェラシー』(13)とルイを主役に起用する。現在、『パリ、恋人たちの影』続く新作「L'Amant d'un jour(原題)」を制作中。
- 64年
- 「Les enfants desaccordes(調子の狂った子供たち)」
- 65年
- 「Droit de visite(訪問の権利)」
- 68年
- 「Anemone(アネモーヌ)」(TV作品)
「Marie pour memoire(記憶すべきマリー)」
◆68年度イェール映画祭グランプリ受賞
「Le revelateur(現像液)」
「La concentration(集中)」
Actua 1(アクチュア1)」集団製作 - 69年
- 「処女の寝台」
- 72年
- 『内なる傷痕』
- 72年
- 「Athanor(アタノール)」
- 74年
- 『孤高』
- 75年
- 「Un ange passe(天使のお通り)」
- 76年
- 「Le berceau de cristal(水晶の揺籠)」
- 78年
- 「Le voyage au jardin des morts(死者の庭への旅)」
- 79年
- 「Le bleu des origines(起源の青)」
『秘密の子供』
◆第32回ジャン・ヴィゴ賞受賞 - 84年
- 『自由、夜』
◆カンヌ国際映画祭「フランス映画の展望」部門展望賞受賞
- 84年
- 「新パリところどころ」より第3話「フォンテーヌ街」*映画祭のみ上映
- 85年
- 「彼女は陽光の下で長い時間を過ごした」
- 87年
- 「Les ministeres de l’art(芸術の使命)」(TV作品)
- 89年
- 「Les baisers de secours(救いの接吻)」
- 91年
- 『ギターはもう聞こえない』
◆ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞受賞 - 93年
- 『愛の誕生』
- 96年
- 「彷徨う心」
- 99年
- 『夜風の匂い』
- 01年
- 『白と黒の恋人たち』
◆ヴェネツィア国際映画祭国際批評家連盟賞受賞 - 05年
- 『恋人たちの失われた革命』
◆ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞、オゼッラ賞受賞 - 08年
- 『愛の残像』
◆カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品 - 11年
- 『灼熱の肌』
◆ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門正式出品 - 13年
- 『ジェラシー』
- 15年
- 『パリ、恋人たちの影』
インタビュー
本作のテーマについて
私は、無意識から何を理解できるか、ということに興味があります。私にとってこの作品は、映画が到達しうる最高の男女平等についての映画といえます。女性のキャラクターに強力な支持を与え、男性への風当たりを強くしました。多くの映画は男性によって設計されているので、描写、視点、語り方についての決定は男性が下しています。例えばスクリーンで女性が心情を吐露するシーン、ほとんどの場合は男性がセリフを書いています。これを解消するため、本作では女性2人、男性2人からなる4人のチームで脚本を作りました。しかし、男性と女性の登場人物を対等な関係においたとしても、映画の機能は、男性の立場を強化する傾向に働くと考えています。釣り合いを取るため、私は女性の側に立ち、男性に不利になるようにしました。最終的に、ピエールはそんなに悪い状態には陥らず、彼とマノンは実際、同じくらいの力を持ってバランスを保ちます。やはり、この映画は男性の視点から作られているのかもしれません。ただし、女性の視点から何が起きているかを見ようとする男性だといえます。そして、本作は母の死とも関わっています。私にとって、『パリ、恋人たちの影』もまた、これまでの作品のように個人的なできごとに大きく影響されているのです。
脚本について
今回、少なくとも自分自身にとって新しいことを成し遂げられたと思っています。これまでの即興で映画を作る期間を経て、脚本があるのはそれと同じくらい良いことだと考えるようになりました。それは、経済的な部分だけでなく、映画そのものに非常に貢献したと感じるからです。特に、本作では心理的なサスペンス描写がより効果的にできました。ジャン=クロード・カリエールとの仕事は、これまでの自分の考えにはなかった“物語の上に成立する脚本”というコンセプトをもたらしてくれました。彼の脚本にはじめて出会ったのは『勝手に逃げろ/人生』でした。カリエールは当時のことを振り返り、脚本を作るうえで、ゴダールに「場所」と「登場人物」を与えられたと言っていました。このアプローチは自分のスタイルにもあっていたので踏襲し、前作『ジェラシー』で共作したアルレット・ラングマンとカロリーヌ・ドゥリュアスと共にテーマを決めました。そこから、カリエールが初期のプロットを提案し、4人各々の異なった要素を持ち寄りました。そうして物語を展開させていったのです。
しかし、脚本が映画の中心ではありませんでした。私にとって映画はいつも、根本的には現場で何が起きるかということに尽き、そこで描かれるものが最終的なものなのです。とはいえ、脚本は重要な役割を果たしました。少ない時間で予算をかけずに映画を作るという状況では、脚本に膨大な時間と精確さをかけてこそ、限られた状況で最大限のものが作り出せるのです。本作は、編集がどのように行われるかも予測しながら、パリやその近郊で21日間、時系列通りに撮影しました。このような条件下で制作するには、何も無駄にはできないし、撮影したすべての素材が必要です。とはいえ編集とは、脚本に書かれる予期できることと、撮影によってもたらされる最終的なものの両方がないと成り立ちません。その意味で、脚本はすべてを予測できないし、してもいけない。カメラでしか描けないことがあり、それこそがもっとも重要なのだと思います。
撮影監督のレナート・ベルタについて
『勝手に逃げろ/人生』で注目したもう一人が彼です。ヌーヴェルヴァーグに関わる偉大な撮影監督の一人でありながら、私が組んだことのあるラウール・クタール、ウィリー・クラン、リュプチャンスキーたちとの映像とはかなり違います。ベルタは、特にライティングに優れています。コントラストが濃く、無煙炭のような映像は、ゲオルク・ヴィルヘルム・パープストが活躍した時代の映画を思い起こさせます。私は、そんな彼の映像がとても好きで一緒にやってみたかったのです。勿論、彼はベテラン技師なのでミスを全くしません。私のようにワンテイクしか撮らない監督にとって、彼ぐらい経験のある人はとても頼りになりました。
キャスト
クロティルド・クロー /マノン
1969年4月3日生まれ、フランス出身。『ピストルと少年』(90/ジャック・ドワイヨン監督)映画デビューし、同作でヨーロッパ映画賞主演女優賞を受賞。1995年には将来を期待される若手女優としてシュザンヌ・ビアンケッティ賞を受賞。その後も、『ひとりぼっちの狩人たち』(95/ベルトラン・タヴェルニエ監督)、『エリザ』(95/ジャン・ベッケル監督)、『パトリス・ルコントの大喝采』(96/パトリス・ルコント監督)、『甘い嘘』(99/マティアス・ルドゥー監督)、『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』(07/オリヴィエ・ダアン監督)など数々の作品に出演し、力強くも繊細な演技力で存在感を放つ。今後の待機作に2016年東京国際映画祭で上映された「Le ciel attendra(原題)」(16/マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督)がある。また、私生活ではイタリア最後の国王ウンベルト2世の孫であるエマヌエーレ・フィリベルト・ディ・サヴォイアと結婚し、ヴェネツィア=ピエモンテ公妃となる。本作では夫を支えながらも、満たされない想いに揺れ動くヒロイン・マノンを見事に演じている。
スタニスラス・メラール /ピエール
1971年1月23日生まれ、フランス出身。アンヌ・フォンテーヌ監督に見いだされ、『ドライ・クリーニング』(97)でデビュー。シャルル・ベルリングとミュウ=ミュウが演じる主人公夫婦を誘惑する、美しい謎の青年役を演じて注目を浴び、同年のセザール賞有望若手男優賞を受賞。以降、主演を務めた「フリア」(99/アレクサンドル・アジャ監督)、『囚われの女』(00/シャンタル・アケルマン監督)ほか、『クレーヴの奥方』(99/マノエル・ド・オリヴェイラ監督)、『イザベル・アジャーニの惑い』(02/ブノワ・ジャコー)などに出演。本作で夫婦役を務めたクロティルド・クローとはミシェル・ドヴィル監督「Un monde presque paisible」(02)で共演を果たしている。本作では、2人の女性の間でゆれる身勝手だけど憎めない、人間味に溢れたピエールを熱演している。
レナ・ポーガム /エリザベット
パリ大学にて哲学・演劇を学び、2009年~12年までフランス国立高等演劇学校に在籍。在学中から舞台を中心に活躍の場を広げる。フィリップ・ガレル監督は、本作でエリザベット役を決めるにあたりスタニスラス・メラールを相手に何人もの若手女優たちとテストや本読みを行うオーディションを敢行。スタニスラスとの演技の相性、そして彼女自身が持っている素質に可能性を見出し、見事エリザベット役に選ばれる。妻がいると知りながらもピエールを愛してしまう難しい役どころを演じ切った。本作が本格的なスクリーンデビューとなる。今後の活躍が期待される新鋭女優。
ルイ・ガレル /ナレーション
1983 年6月14日生まれ。フランス・パリ出身。フィリップ・ガレルと女優ブリジット・シイの間に生まれる。6歳で父親が監督する「Les baisers de secours(救いの接吻)」に出演し、映画デビューを飾る。フランス国立高等演劇学校などで演技を学び、「これが私の肉体」(01)に出演、ジェーン・バーキン、メラニー・ロランと共演した。その後、ベルナルド・ベルトルッチによる『ドリーマーズ』(03) に主演し国際的にも注目を集める。演劇学校を卒業後はクリストフ・オノレやジャック・ドワイヨンの映画などに出演。『恋人たちの失われた革命』(05/フィリップ・ガレル監督)でセザール賞の有望若手男優賞を獲得。以降、『愛の残像』『灼熱の肌』『ジェラシー』と立て続けにフィリップ・ガレル監督作品に主演。本作では、はじめてナレーションとして作品に参加している。今後の待機作にマリオン・コティヤールと共演する「Mal de Pierres(原題)」(16/ニコール・ガルシア監督)、ナタリー・ポートマン主演「Planetarium(原題)」(16/レベッカ・ズロトヴスキ監督)、ジャン=リュック・ゴダール役を演じる「Redoutable(原題)」(17/ミシェル・アザナヴィシウス監督)など、話題作が続く。
スタッフ
共同脚本:ジャン=クロード・カリエール
1931年9月19日生まれ、フランス出身。これまで映画史に燦然と輝く傑作を数々手掛ける。ピエール・エテックス監督の短編「Rupture」(61)で脚本家としてデビュー、同監督『女はコワイです』(62)、『大恋愛』(69)などを手掛ける。また、ルイス・ブニュエル監督『小間使の日記』(63)ではじめてタッグを組むとヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞『昼顔』(67)、『銀河』(68)、アカデミー賞外国語映画賞受賞『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』(72)、『欲望のあいまいな対象』(77)など傑作を生みだす。そのほか、ジャック・ドレ―監督『太陽が知っている』(68)、『ボルサリーノ』(70)や、『勝手に逃げろ/人生』(79/ジャン=リュック・ゴダール監督)、『マックス、モン・アムール』(86/大島渚監督)、『五月のミル』(89/ルイ・マル監督)、『チャイニーズ・ボックス』(97/ウェイン・ワン監督)など、映画界を代表する巨匠たちと共同作業を重ね、現在も精力的に活動する。
撮影:レナート・ベルタ
1945年3月2日生まれ、スイス出身。ダニエル・シュミット監督のデビュー作『今宵かぎりは…』(72)をはじめ『ラ・パロマ』(72)、『カンヌ映画通り』(81)、『ヘカテ』(82)、『トスカの接吻』(84)、『季節のはざまで』(92)、坂東玉三郎にスポットをあてたドキュメンタリー『書かれた顔』(95)など数多くを手がけ、ダニエル・シュミット監督作品には欠かせない存在に。また、ロカルノ国際映画祭で金豹賞を受賞した『どうなってもシャルル』(69/アラン・タネール監督)、『勝手に逃げろ/人生』(79/ジャン=リュック・ゴダール監督)、『満月の夜』(84/エリック・ロメール監督)ほか、マノエル・ド・オリヴェイラ監督、アラン・レネ監督など数々の巨匠とタッグを組んできた。ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞した『さよなら子供たち』(87/ルイ・マル監督)ではセザール賞撮影賞を受賞している。
音楽:ジャン=ルイ・オベール
1954 年4月12日生まれ、フランス出身。フランスのロック・バンド「テレフォン(テレフォヌ)」(1976 ~ 86)の元メンバー。英国アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『ずっとあなたを愛してる』(08/フィリップ・クローデル監督)で音楽を手がけている。フィリップ・ガレル監督とは、ジャン?ルイ・オベールが自身のミュージックビデオの製作をガレルに頼もうとしたことがきっかけで、『ジェラシー』(13)の音楽を担当することとなる。『パリ、恋人たちの影』では、哀愁を感じさせつつもあたたかみのある旋律で作品の世界を彩る。
音響:フランソワ・ミュジー
これまで数々のジャン=リュック・ゴダール作品に参加。『パッション』(82)、『ゴダールの探偵』(85)、『右側に気をつけろ』(87)、『ヌーヴェルヴァーグ』(90)、『新ドイツ零年』(91)、『ゴダールの決別』(93)、『フォーエヴァー・モーツァルト』(96)、『愛の世紀』(01)、『アワーミュージック』(04)、『ゴダール・ソシアリスム』(10)などを手掛ける。ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞した同監督『カルメンという名の女』(83)では技術功績賞に輝いた。そのほか、グザヴィエ・ジャノリ監督、オリヴィエ・アサイヤス監督、トニー・ガトリフ監督などと共同作業を重ねる。フィリップ・ガレル監督作品へは『愛の誕生』(93)、『灼熱の肌』(11)に続き、3本目の参加となる。
編集:フランソワ・ジェディジエ
アルノー・デプレシャン監督『二十歳の死』(91)、『魂を救え!』(92)、『そして僕は恋をする』(96)などに参加。また、パトリス・シェロー監督からの信頼も厚く、セザール賞で監督賞ほか多数受賞した『愛する者よ、列車に乗れ』(98)、ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞『ソン・フレール -兄との約束-』(03)、「ガブリエル」(05)など数多くタッグを組む。マチュー・アマルリックが監督を務めた監督デビュー作「Mange ta soupe」(97)をはじめ「Le Stade de Wimbledon」(01)、「青の寝室」(14)と担当。そのほか、カンヌ国際映画祭パルムドール受賞ほか数々の賞に輝いた『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(00/ラース・フォン・トリアー監督)、『みんな誰かの愛しい人』(04/アニエス・ジャウィ監督)、『オン・ザ・ロード』(02/ウォルター・サレス監督)、『イヴ・サンローラン』(14/ジャリル・レスペール監督)などがある。
劇場情報
特集上映
※特集上映は終了いたしました。
クレジット
公式サイト
www.bitters.co.jp/koibito
公式Facebook
www.facebook.com/koibitotachinokage/
公式Twitter
@garrel_movie
2015年/フランス/73分/モノクロ/配給:ビターズ・エンド
コメント
割れ鍋に綴じ蓋的なしょうもない男と女の不思議な縁を
こんなにつややかに、魅惑的に、愛おしく描くなんて。脱帽です。
――山崎まどか(コラムニスト)
男女のもめ事や修羅場を淡々とこなす
フランス人の恋愛ポテンシャルに完敗です。
――辛酸なめ子(漫画家・コラムニスト)
愛は美しいものだけど、同時にひどくずるいものだ。
こんなにもリアリティをもって愛が描かれた作品を私は他にみた事がない。
モノクロームの映像はそういったものを私的に昇華させている。
――シトウレイ(ストリートスタイル・フォトグラファー)
男と女のめんどっちい関係を描いているのに、どこかやわらかい不思議な映像。パリの街が「こんな愛をずっと見てきたの」と言わんばかりに彼らを肯定しているかのような。
モノクロだからこそ映る色がある。
――松江哲明(ドキュメンタリー監督)
(順不同・敬称略)