主人公ソニには『トガニ 幼き瞳の告発』のチョン・ユミ。『教授とわたし、そして映画』『3人のアンヌ』に続きホン・サンス作品に登場。新たなホン・サンス作品のミューズといえよう。媚びることなく、男たちの間を猫のようにすり抜ける、どこか憎めないソニをキュートに演じている。
男たちの心情を代弁するかのような懐メロ歌謡、酒の肴として登場するチキン、様々なシチュエーションで繰り返し語られるフレーズ。ホン・サンス特有の反復がいかんなく発揮され、観る者の笑いを誘う。
2013年ロカルノ国際映画祭コンペティション部門に『ソニはご機嫌ななめ』は出品された。緻密な構成の中から見える、生き生きとしたフリーハンドのような軽やかさ。何気ない男女の会話から浮かび上がるそれぞれの感情。運命と偶然のあいだを行き来する、誰も真似できないホン・サンスのスタイルは批評家、審査員から絶賛され、見事、監督賞を受賞した。これは同映画祭において、初めての韓国人監督の受賞となる。2013年9月12日に韓国で公開されるや、ソニと3人の男たちが繰り広げる恋のやり取りに、facebookやtwitterで女性たちが熱く反応、愛すべき小悪魔キャラ、ソニが圧倒的な共感を呼び、ホン・サンス監督作品史上最大のヒットとなった。