アラン・カミング Alan Cumming

Interview

──ルディは派手で感情を爆発させるタイプですが、あなたの演技は彼の中の孤独、寂しさもとらえていました。

ルディが持つキャラクターの二面性をどう表わせばいいのか随分迷った。冒頭にルディが見せる不躾さと気軽さ、マルコやポールに対する優しさ……。そして、ルディのような人は自分を守る鎧のようなものが必要なんだと気付いた。生きていくためには虚勢を張らないといけない。一方で彼には自己卑下やユーモアもある。孤独は僕が演じようと思った大きな要素だ。『チョコレートドーナツ』の中でルディは初めてひとりでなくなる。それは彼にとってこれまで経験したことがなかったことなんだ。

──『チョコレートドーナツ』は政治的、文化的、法的な問題にも関わる作品です。そして、この映画はアウトサイダーについての物語でもあります。状況によって、あるいは個人的な選択によって、権利を奪われている人たちです。

偉大なドラマと言うのはどれもアウトサイダー的なところがあるんだと思う。何らかの点で人と違っている人たち。『チョコレートドーナツ』には、3人のアウトサイダーがお互いに愛し合うことを認めてもらおうとしている。それは誰からも邪魔されるべきことじゃない。この映画は、ゲイの権利、養子、障がい者を僕たちがどう見ているかについて語っているけれど、一番重要なのは“家族”について、他人をいたわり、愛するという誰もが持つ基本的な欲求を描いている点だ。

──マルコ役のアイザック・レイヴァとはどのように演じたのでしょうか。演技経験がない彼を導いたのか、それとも彼自身に任せていたのでしょうか。

アイザックは本当に美しい少年で、会ってすぐに仲良くなった。確かに保護的に振る舞ったけれど、それは初めて映画に出る状況に置かれた人に対してするようなものだ。アイザックと仕事をできたことが今回の最大の収穫だね。彼の感覚は純粋で率直そのものだった。それで、演技がどうあるべきかを彼のおかげで思い出した。僕は彼を崇拝しているし、彼に感謝し続けるだろう。

──『チョコレートドーナツ』は養育権をめぐる法廷劇を描きながらも、対照的なふたりの人物の恋愛物語でもあります。あなたが演じる性的に開放されたショーダンサーと、ギャレット・ディラハント演じる同性愛者であることを隠している弁護士。おふたりの演技は客観的かつ優しさに満ちていました。

ギャレットと僕はそれまで会ったことがなくて、ふたりが初めて一緒に出るシーン撮影の1日か2日前にやっと会った。彼相手だと僕はすぐにリラックスできて、お互いの目を見てこう思った、「僕は君を信頼しているよ。これから僕たちが一緒にやることは、感情的、精神的にとてつもないことだけど、でも僕は君を信頼してる」と。そのシンクロが、たった一秒でも外れたことはない。僕らはお互いに相手を信用することに賭け、始めからお互いに好きになったんだ。

──ルディの生活の中心は音楽です。『チョコレートドーナツ』であなたが歌うボブ・ディランの名曲「I Shall Be Released」は見事でした。この曲はあなたから監督に提案したのでしょうか。

僕はこの曲を全然知らなかった。映画の後半は書きかえられたこともあり、「I Shall Be Released」を録音することになったのは随分後だった。ベット・ミドラーが1970年代にNYのバスハウスで、バリー・マニロウと一緒に歌っているYoutubeの映像をトラヴィスが送ってくれた。「これ以上すごいのが僕にできるのか」って思ったね。信じられないほど心震えるカバーだった。僕がレコーディングしたのは撮影のかなり終わりの方で、ルディの悲しみを感じることができたし、それを歌に込めようとした。ルディがポールを見て、「僕は誓うよ、愛する人、僕たちは解放されるんだ」と歌う瞬間はとても美しいし、この歌が物語にとてもうまくはまっていることが素晴らしいと思う。

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