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伝説のギタリストたちを虜にする職人は、建物のヴィンテージ廃材から、世界でひとつのギターを生み出す。
グリニッジ・ヴィレッジに位置する「カーマイン・ストリート・ギター」。 店員は、パソコンも携帯も持たないギター職人のリック・ケリーと、パンキッシュな装いの見習いシンディ、そしてリックの母親の3人のみ。世界中のギタリストを魅了する、 この店だけの“ルール”―それは、ニューヨークの建物の廃材を使ってギターを作ること。チェルシー・ホテル、街で最古のバー・マクソリーズ……、それらは長年愛されてきた街のシンボル。 工事の知らせを聞きつけるたび現場からヴィンテージ廃材を持ち帰るリックは、傷も染みもそのままにギターへ形を変えるのだった。 足早に表情を変えゆくニューヨークと、変わらずにあり続けるギターショップの愛に満ちたドキュメンタリー。
ルー・リードやボブ・ディランも来店!そのギターを手にすれば、誰もが笑顔溢れ出す。
ルー・リード、ボブ・ディラン、パティ・スミスら大御所がリックのギターを愛用。劇中ではビル・フリゼール、マーク・リーボウ、チャーリー・セクストンなど、人気ギタリストたちが次々と来店。彼らがリックのギターを手にし、幸せそうに演奏する姿が贅沢に収められている。 さらには、ニューヨーク・カルチャーを牽引する映画監督、ジム・ジャームッシュの姿も。ギタリストたちを魅了し続ける、ユニークなギターショップの1週間が映し出される。
Rick Kellyリック・ケリー
ニューヨーク州南東部・ロングアイランド育ち。幼い頃から木材職人の祖父の仕事をそばで見ていた影響から木材に魅了され、ギター職人の道へ。ケリーは大学で彫刻を学びながら古材を集めては、ものを作るようになり、この頃からエレキギターも作り始めた。やがて彼は1970年代後半にグリニッジ・ヴィレッジに店を出し、そして90年に、現在のカーマイン・ストリート・ギターへと引っ越した。 彼にギターを作ってもらおうと自宅の屋根裏の木材を持ってきたジム・ジャームッシュとの出会いが、約2世紀前にロウアー・マンハッタン、グリニッジ・ヴィレッジ、バワリー、そして今のソーホーやトライベッカといった地域の建設のために伐採された材木を、ケリーが発見するきっかけになった。
Cindy Hulejシンディ・ヒュレッジ
「カーマイン・ストリート・ギター」で働いて5年(撮影当時)が経つ、リックの弟子。元々、大工だった父の影響で物作りに興味を抱き始める。同様に父が趣味にしていたギターは、彼女にとって身近なものだった。アートスクールに通っていたことから、細かい作業が得意で、ウッドバーニングや、ペイティングを施したギターやストラップも作っている。
Dorothy Kellyドロシー・ケリー
リックの母親。主な仕事は、店番・電話番・店のはたき掃除。
Dallas Good, Travis Good
ダラス・グッド、トラヴィス・グッド
ザ・セイディースのメンバー。TVドラマ、映画のサウンドトラックを手掛ける。本作の楽曲を担当。
Lenny Kayeレニー・ケイ
パティ・スミス・バンド所属。16年来日時のバック・バンドも務める。ジャーナリスト・プロデューサーなど活動は多岐にわたる。
Bill Friselビル・フリゼール
6月8~10日にビル・フリゼール・トリオで来日。 現代ミュージック・シーンの重鎮ギタリスト。5月にビル・フリゼール、トーマス・モーガンのデュオによる『エピストロフィー』が発売。劇中ではアルバム『ギター・イン・ザ・スペース・エイジ』(14)に収録しているビーチボーイズ“サーファーガール”を弾く。
Bill Frisell『Surfer Girl』視聴はこちら
Kirk Douglasカーク・ダグラス
ヒップホップ・グループのザ・ルーツではキャプテン・カークのステージ・ネームで参加。
Nels Clineネルス・クライン
ウィルコのギタリスト。07年にはローリング・ストーン誌の「新世代ギター・ゴッド20人」のひとりに選出。ウィルコのフロントマン、ジェフ・トゥイーディーの50歳の誕生日の贈り物を買いに来店。
Jim Jarmuschジム・ジャームッシュ
かつて自身が住んでいたアパートの木材からリックがギター製作を依頼。以降、リックと交流を深めている。『パターソン』(16)のサウンドトラックをも手掛けたバンド、スクワールのフロントマンである。
Christine Bougieクリスティン・ブジー
ラップ・スティール・ギター奏者。作曲家でありパフォーマーとマルチに活動中。
Stewart Hurwoodスチュアート・ハウッド
ルー・リードのギターテック(ローディ―ではなく、ギターの世話係)。彼の死後、ルー・リードのパートナー、ローリーに声をかけ<ルー・リード ドローン>というタイトルで追悼コンサートを行う。ドローンとは:単音で変化の無い長い音を指す音楽用語。
Eleanor Friedbergerエレノア・フリードバーガー
フランツ・フェルディナンドがファンであることを公言する、ブルックリンの兄妹ポップ・デュオ、ザ・ファイアリー・ ファーナセスで活動中。劇中では、自身のソロ・アルバム『PERSONAL RECORD』(13)より“ I Am the Past”を演奏。
Jamie Hinceジェイミー・ヒンス
ガレージロック・デュオ、ザ・キルズのギタリスト。ケイト・モスの元旦那。日本では<ホステス クラブ ウィークエンダー>でヘッドライナーを務める。事故により左手中指の腱を失うが、自己流の奏法を確立し、5年の歳月を経て音楽活動に復帰。
Marc Ribotマーク・リーボウ
過去にエルヴィス・コステロ、トム・ウェイツ、カエターノ・ヴェローゾ、矢野顕子らと共演し、アレン・ギンズバーグとポール・マッカートニーが連名で発表したシングルなどにも参加。18年7月に来日。同年<フジロックフェスティバル>(以下、<フジロック>)にも出演。
Eszter Balintエスター・バリント
女優であり、ギタリスト。『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(84/ジム・ジャームッシュ)に出演。
Dave Hillデイブ・ヒル
コメディアン、ライター、ミュージシャン、俳優とマルチに活躍するニューヨーク在住のタレント。
Charlie Sextonチャーリー・セクストン
85年に17歳でデビューした元祖“アイドル”ギタリスト。当時「ジミヘンの再来」とも。現在はボブ・ディラン・バンド所属。18年<フジロック>来日。 『テルマ&ルイーズ』(91/リドリー・スコット)では酒場のシーンで演奏し、『6才のボクが大人になるまで。』(14/リチャード・リンクレイター)にはバンドマン役で出演。イーサン・ホークの監督作「Blaze」(18)にも出演、ふたりでレーベルを立ち上げるなど仲の良さがうかがえる。
Ron Mannロン・マン
1959年、カナダ トロント生まれ。映画監督でプロデューサーでもあるロン・マンは、ジャンルに捉われずに、柔軟な姿勢で取り組むドキュメンタリー映画の作り手として名を知られている。ジャズ(「Imagine the Sound」81年)から、話し言葉 (「Poetry in Motion」82年)、コミック(「Comic Book Confidential」88年)、ダンス(「Twist」92年)、マリファナ(「Grass」99年)、車文化(『ラット・フィンク ぼくのビッグ・ダディ』06年)、キノコ (「Know Your Mushrooms」09年)、そしてインディペンデント映画(『ロバート・アルトマン/ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男』15年)に至るまで、マンの映画は豊かで現代的な手法を用いて、題材の精神と魂を呼び覚ます。製作会社「Sphinx Productions」の代表をつとめる傍ら、03年に音楽プロモーターのゲーリー・トップと共に配給会社「FILMS WE LIKE」を創設。
Diretor’s Voice
「この映画ができたのはジム・ジャームッシュのおかげです。彼は私にギター職人のリック・ケリーと彼の店「カーマイン・ストリート・ギター」を紹介してくれた人物です。何年も前に、ジムはリックに改築中だった自宅の屋根裏の木材を持っていき、ギター作りを依頼しました。それが、リックがニューヨークの建物の再生木材を使うきっかけ。私は、音のいいかっこいいギターだけではなく、独特な空気が漂うユニークなこの店と、リックの禅のような哲学に魅了されました。そして、そのすべてが静かに消え去ってしまう前に、カメラに収めておかなければならないと感じるに至ったのです」
1999年、ロバート・クワインとレコーディング出来ることになり滞在していたニューヨーク。
毎日のように街を色々と案内してくれました。その中で1番好きなギター屋だと言って連れて行ってくれたのがカーマイン・ストリート・ギター。ケリーさんはとても気さくな方で、偏屈者のクワインが心許しているのがすぐに伝わってきました。
2004年、毎日店に顔を出していたクワインが数日来ない事を不審に思い、警察に届けてくれたのもケリーさん。
映画の中で壁のクワインの写真がズレて直してもまたズレる…。最高のシーンでした。
ロン・マン監督、素敵な映画をありがとう!
ケリーさん、シンディ。
いつまでも美しいギターを作り続けてください。また遊びに行きまーす!
斉藤和義
ミュージシャン
ニューヨークの街角にあるこのギターショップには夢があっていいですね。
ギタービルダーが楽器の価値を高めていくために、あらゆる事を妥協をしないで追求をしている姿勢にはとても共感するし刺激になります。
僕のアンプをメンテナンスしてくれている方もやはり携帯電話を持たないですね。
鈴木茂
ミュージシャン
私のうちのすぐ近くにある、ひなびたドアの向こう側。
こんなに豊かな時間が流れていた。
お願い、火事にならないで。二人で手が動かなくなるまで作り続けて。
これを見たら誰もが同じ気持ちになるだろう。
矢野顕子
ミュージシャン
昨日から明日へ、
ニューヨークの鼓動は今日も美しく鳴り響く。
ありがとうリック、シンディそしてドロシー!ロックンロール!
真島昌利
ロックンローラー
カーマイン・ストリート・ギターは
2009年の春頃に一度伺ったことがあります。
劇中のビル・フリゼールさんの『Surfer Girl』は息をのむほど美しい音でしたし、何よりギターや木材を眺め、扱うリックさんの優しい姿に、ギターを始めた頃から楽器屋さんで色んなこと経験させてもらった自分は、また一つ何か大事なことを教わった気がします。
この映画に出会えたことに感謝しています。
山内総一郎
フジファブリック
弾くように話したり、話すように弾いたり。
新しいギターが欲しくなるのではなく、今持っているギターをより大切にしたくなる。
そんな映画だった。
尾崎世界観
クリープハイプ
NYの歴史は、彼の手によってこの先も受け継がれていく。それがギターという形だなんて、最高じゃないか!
ハマ・オカモト
OKAMOTO'S
廃材を使ってギターを作る、ケリーさんのルール。これは、ゴミ箱に捨てられていたギターで、今までに何百曲も作曲してきた僕と相通ずるものがあり、観ていて幸せな気分になりました。
チチ松村
ミュージシャン/ゴンチチ
人と道具とまち、未来につながる、あたたかい時間軸を感じました。もうひとつのSDGs(Sustainable Development Guitars)ですね!
指出一正
ソトコト編集長
リック・ケリーが作るギターは文字通りニューヨークの一部です。また、こじんまりとした彼の店の客層はダウンタウンNYC文化を象徴する錚々たるメンツばかりです。店の奥でこつこつと作業するリックの姿は日本の伝統職人を思わせる時もあり、決して余計な口をききませんが、木とギターに対する愛情はひしひしと伝わります。ギター・ファンには堪らない映画です。
ピーター・バラカン
ブロード・キャスター
古材の傷も染みもまるごと生かして作られたギターに触れると、たちまち頬がゆるむスーパーギタリストたちの素の姿にキュンとしました。ヤスリをかけるリックの手はまるで愛おしいニューヨークを撫でているよう。 味のあるカーマイン通りもこの店も、必ず再訪したいです。
奥浜レイラ
音楽・映画パーソナリティ
なんとも味わい深い!
ジム・ジャームッシュもふらりと立ち寄るこの店には、
人生の真の豊かさがある。
店に漂う木の香りに酔い、音に酔う。
中村千晶
映画ライター
※順不同、敬称略